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2015 年度 実施状況報告書

分子超格子を使った分子トンネル素子の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K13819
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

若山 裕  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (00354332)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード半導体デバイス / トンネル現象 / トンネルトランジスタ
研究実績の概要

これまでに我々は、水素結合や双極子相互作用を持つ異種分子同士を同時に基板上に真空蒸着すると、自己組織的に異種分子が交互配列することを見いだしてきた。この交互配列は分子の混合比に依存しており、これら一連の分子膜を「分子超格子膜」として発表してきた。この成果をさらに電子デバイスに応用展開すべく、本課題では分子超格子膜を使ってトンネル電流を制御した新しい分子素子を開発することを目標にしている。具体的には分子超格子膜の上下を絶縁膜で挟み込み、さらにその上下に電極を取り付けたトンネル二重接合を形成する。ここに電圧を印加したとき、異なる分子に異なる電圧でトンネリングを誘起する多段階スイッチングを引き起こし、この現象を縦型トランジスタの中で制御した新しい素子開発を目指す。これを実現するため以下の研究項目に順次取り組んでいる。
1.真空技術を使って分子超格子膜を中心に絶縁膜と電極を積層したトンネル二重接合を作る。
2.異なる分子に異なる電圧でトンネル電流を流す多段階トンネリングを実証する。
3.ゲート電極を配線した縦型トンネルトランジスタで多段階スイッチング動作を実証する。
この中で平成27年度には項目1のトンネル二重接合の作製と項目2の多段階トンネリングの基礎評価までに取り組み、平成28年度にはゲート電極を配した縦型トンネルトランジスタの実証へ進めていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トンネル二重接合の作製・多段階スイッチングの測定・縦型トンネルトランジスタの実証の3つのマイルストーンを設定して研究を計画している。この中で平成27年度は特にトンネル二重接合の作製と多段階トンネリングの基礎評価に注力した。分子としてはフッ素化銅フタロシアニンを中心に、これと異なる電子準位を持つ分子の組み合わせを検討する。具体的には銅フタロシアニン-フッ素化銅フタロシアニンおよびペンタセン-フッ素化銅フタロシアニンの組み合わせが候補になる。いずれもp型半導体-n型半導体の組み合わせになる。銅フタロシアニン-フッ素化銅フタロシアニンの組み合わせを検討したところ、それぞれの準位に対応した印加電圧で電荷のトンネリングが独立に誘起できることが確認できた。つまり多段階トンネリングの基本動作が実証されたことになる。その一方で、トンネリングを誘起する閾値電圧に大きなばらつきがあることが観察された。これはフタロシアニン分子が分子超格子膜を形成せずに、凝集してしまい、その結果電子準位が分裂している可能性が考えられる。

今後の研究の推進方策

今後取り組むべき課題は絶縁膜表面上で分子超格子膜を形成することにある。これまで作製してきた分子超格子膜は金属基板上で形成されてきた。これは金属基板上(特にAu(111)面上)では分子の表面拡散が促進され、異種分子が自己組織的に交互配列するためであった。既に観察された分子の凝集と電子準位の分裂を回避して、絶縁膜上でも分子超格子膜を成長させるためには極めて不活性な表面を持った絶縁薄膜が必要となる。そこで本年度はh-BN(窒化ホウ素)原子膜を絶縁膜上に成長させ、そこの分子超格子膜の形成を試みる。このため化学気相成膜法(CVD)を使ってh-BN膜をAl2O3膜上に成長させるための条件を最適化する。
なお、既に縦型トランジスタの初期的実験には着手しており、サイドゲートでトンネル電流を変調している様子を観察している。しかしこの変調がゲート電圧によってSi基板中に空乏層が形成されていることに起因している可能性もある。これに対し、本年度は空乏層の可能性を排除するため異なる極性の基板(n型・p型)を用いたり、印加電圧を制御することにより詳細な解析を進める。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] Donostia International Physics Center/Univeristy of Basque County(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      Donostia International Physics Center/Univeristy of Basque County
  • [学会発表] Interface Engineering for Molecule-Based Single-Electron Tunneling Devices2016

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Wakayama, Ryoma Hayakawa, Kenji Matsuda, Kenji Higashiguchi
    • 学会等名
      International Conference on Electronic Materials
    • 発表場所
      Singapore
    • 年月日
      2016-07-04 – 2016-07-08
    • 国際学会
  • [学会発表] Molecules meet Si: bridging single-molecular function with practical device2015

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Wakayama
    • 学会等名
      16th Trend in Nanotechnology International Conference
    • 発表場所
      Toulouse, France
    • 年月日
      2015-09-07 – 2015-09-11
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Molecular Functions in Si-based tunneling devices2015

    • 著者名/発表者名
      Yutaka Wakayama
    • 学会等名
      Collaborative Conference on 3D and Materials Research 2015
    • 発表場所
      韓国釜山
    • 年月日
      2015-06-15 – 2015-06-19
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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