研究課題/領域番号 |
15K13824
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三浦 英生 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90361112)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グラフェンナノリボン / ひずみセンサ / 第一原理解析 |
研究実績の概要 |
単層グラフェン膜を微細加工技術によりナノスケールに加工すると超金属的な電子バンド構造が半導体的なバンド構造に変化し,ナノスケール領域においては,電子物性が原子配列や構造寸法に強く依存して大きく変化することを,第一原理解析と分子動力学解析を併用した量子化学解析により明らかにした.さらに半導体的な性質を示す寸法領域においては,バンド構造に著しいひずみ依存性が存在し,超金属的な性質を示す電子のπ軌道と半導体的な性質を示すσ軌道が混成することでバンドギャップが大きく変動することも明らかにした.室温近傍においては,電子伝導特性のシフトを示す臨界寸法が約70 nmであることも明らかにした.さらに,グリーン関数を導入し,ナノ寸法に加工したグラフェンナノリボンの電流電圧特性を解析する新たなプログラムの開発にも成功した.その結果,電流電圧特性も強いひずみ依存性が存在するとともに,その依存性には構造形態と寸法依存性も重畳することを明らかにした.これらの構造因子と電場因子を統計的に解析した結果,ひずみセンサとして機能する領域において,最大感度(ゲージ率)として従来の半導体ひずみゲージの約250倍,カーボンナノチューブで報告されていた最大感度の約20倍の最大53000を得ることができる見通し(最適構造と負荷条件)を得た. 以上の解析結果に基づき,グラフェンナノリボン応用ひずみセンサ製造プロセスとして,高品質大面積グラフェン膜の高速製造方法と,大変形追従可能なフレキシブル基板上へのひずみセンサ製造プロセスを開発した.従来高品質膜は得られないと考えられていたアセチレンガスを応用した高速プロセスにおける厳密濃度制御方法を確立することで,単層グラフェン膜の高速大量生産の可能性を見いだすとともに,PDMS(polymethylmethacrylate)上へのひずみセンサ製造方法を確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェンナノリボンの電子物性の寸歩及びひずみ依存性を定量的に解明でき,研究目標である大変形追従可能な超高感度ひずみセンサ製造の要素プロセスも予定通り開発することに成功した.研究成果を米国機械学会および日本機械学会で発表し,それぞれOutstanding Poster Award,機械学会フェロー賞(学生の発表に対する若手優秀講演賞)なども受賞でき,研究の独創性や工学的な有用性も国内外の学会から高い評価を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は当初の予定通り,前年度に構築した設計指針に基づき,グラフェンナノリボンを応用した超高感度ひずみセンサの試作評価に挑戦する.開発予定のひずみセンサは金属伝導から半導体伝導間の電子伝導メカニズムシフトによる大きな抵抗値変化に基づく超感度特性だけでなく,面外変形,負荷も検出可能な三次元ひずみ場センサとしての活用も期待される.以上の研究成果に基づき本研究で提案するGNRの電子物性制御方法(設計指針)と,具体的な各種デバイスの低コスト製造方法が提示できるものと考えている.
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