研究課題/領域番号 |
15K13826
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内一 哲哉 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (70313038)
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研究分担者 |
高木 敏行 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (20197065)
三木 寛之 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (80325943)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 材料評価 / 非線形超音波 / 電磁超音波探触子 / 超伝導マグネット / 疲労き裂 |
研究実績の概要 |
非線形超音波試験法はき裂サイジングの信頼性を向上させる手法として世界的な注目を集めているが、非線形超音波現象そのもののメカニズムが明らかになっていない。本研究では、振幅と周波数を制御した大振幅超音波に対するき裂の応答を定量的に評価することにより、非線形超音波の発生機構を解明する。このために本研究では、新しいアプローチとして超伝導マグネットによる強磁場下において電磁的に超音波を送信する手法を提案する。従来の圧電素子を用いた接触式探触子では不可能であった超音波の中心周波数と振幅の広範囲にわたる定量的 制御が可能となる。本手法により、様々な種類の閉口き裂に対して非線形超音波が発生するパラメータ領域を明らかにし、超音波非線形現象の解明に資する知見を得ることを目的とする。 平成27年度は、現有のヘリウムフリー超伝導電磁石を用いた電磁超音波送信システムを構築した。最大磁束密度が5Tである貫通孔空間に送受信プローブを固定した試験片を設置し、送受信プローブをEMAT用高出力パルサーレシーバーに接続し、超音波試験の送受信を確認した。また、電磁超音波送信システムによる超音波の伝播シミュレーションを行うために、電磁場解析と超音波伝搬解析を組み合わせた数値解析を行い、プローブの設計を行った。 次年度に行う閉じた疲労き裂試験片を用いた非線形超音波試験のために、SUS316を用いた疲労き裂の試験片の製作法について検討した。疲労試験における応力拡大係数範囲と応力比についてパラメータサーベイを行った。導入した疲労き裂の超音波試験と渦電流探傷試験を行い、き裂が閉口するための試験条件の探索を行った。次年度は、これらの条件に基づいてき裂閉口量を制御した試験片に対して超伝導電磁石を用いた電磁超音波送信システムを用いた超音波試験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、超伝導電磁石を用いた電磁超音波送信システムを構築し、超音波が実際に送信されることを確認することが最重要の課題であり、これを達成することができた。また、次年度に実施予定の非線形超音波試験に必要なプローブの設計のためのツールとして、電磁超音波送信システムによる超音波の伝播シミュレーションも構築した。また、非線形超音波試験試験に必須の閉じたき裂についても、作製条件を探索し、閉口量を制御してき裂を進展させる知見も確立した。以上より、次年度に課題を推進するための準備はほぼ完了したものといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度構築した電磁超音波送信システムと、製作した疲労き裂試験片のセットを用いて、超音波の中心周波数と振幅を制御した超音波試験を実施する。今後、状況に応じてプローブ(コイル形状など)の最適化が必要であるが、本年度構築した電磁超音波送信システムによる超音波の伝播シミュレーションツールを活用してプローブ設計を行う。今後はこれまでの準備に基づいて、試験周波数とマグネット印加磁場強度を系統的に変化させ、超音波の変位場振幅と試験周波数で非線形現象の発生の有無を整理した非線形超音波マップを構築し、非線形超音波の発生領域を可視化する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度構築した超伝導電磁石を用いた電磁超音波送信システムにおける試験片固定の治具について、今後本格的な試験を行うに向けて耐力を増した設計としないといけないことが判明した。このため、次年度に本格的な治具を製作する。また、本年度は本研究の準備段階であり、海外における成果発表、打合せを次年度に延期し、より効果的な成果発表、打合せを行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
電磁超音波送信システムにおける試験片固定の治具について、想定される電磁力に耐えるだけのものを作製する。また、アメリカにおいて開催される非破壊検査に関する国際会議での成果発表を当初予定に加えて追加する。
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