研究課題/領域番号 |
15K13828
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
松谷 巌 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00514465)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近接場光 / SNOM / 超音波検出 |
研究実績の概要 |
超音波パルスエコー法は、超音波の送受信を同一点で行うことによって、材料中の欠陥や生体内の病変等を非破壊計測できる優れた手法である。しかしながら、従来の超音波センサはミリオーダーの分解能程度であるため、極小物を対象としたエコー計測は不可能であった。一方、近接場光を利用した超高分解能の超音波検出プローブ(プラズモニックプローブ)が報告されているが、超音波の検出のみの機能で、超音波の発生ができないため、パルスエコー計測が実現できていない。本研究では、フェムト秒レーザで励起した近接場光を利用して、同一点で超音波を発生/検出できる、光学式の超音波センサを開発する。そのためには、近接場光を利用した超音波の検出機構と超音波の励起機構を開発し、両者を統合する必要がある。そのために、第一段階としては走査型プローブ顕微鏡システムを改造して近接場光顕微鏡(SNOM)として運用する。今年度は、日立ハイテクサイエンス製のAFMを購入し、近接場光による超音波の検出のための装置を構築した。背景光を除去するために、光検出器にヘテロダイン干渉計を適用した。ロックインアンプでこれらの散乱光をモニタするため、プローブの振動周波数とPZTの振動周波数を同時に参照信号とすることができる周波数加算回路を作成した。これによって、SNOMによる超音波検出機構が完成しつつある状況となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主に近接場光による超音波の検出のための装置開発を行った。装置の中核をなす近接場光顕微鏡部分については、日立ハイテクサイエンス社製の走査型プローブ顕微鏡システムを導入した。この装置は自己検知型のカンチレバーを有しており、従来の光てこ方式と比較してカンチレバー上部の空間を大きく取ることができるため、SNOM用に装置のレイアウトを自由に構成することが可能である。プローブ光に用いるレーザは光 弾性変調法によって変更状態を制御された状態で、AFMのカンチレバーに照射される。プローブ先端には近接場光が励起され、測定対象物が弾性振動すると、プローブと測定対象物の距離に応じて散乱光を放出する。この散乱高強度を計測することで、サンプルを伝搬する超音波を検出する。最初に、プローブをタッピングモードで駆動しながら、プローブ-基板間の距離と散乱光の強度との関係を取得する。次に、SNOMによる超音波振動の検出を行う。現状では散乱光に背景光が干渉してしまったため、散乱光強度の距離依存性の計測ができなかった。そこで、背景光の影響を除去するために、光検出器にヘテロダイン干渉計を適用することとした。得られた光信号には、干渉計の中のPZTの振動成分とカンチレバーの振動成分が含まれるため、ロックインアンプでこれらの信号を参照しながら、散乱光をモニタする。これを実現するために、プローブの振動周波数とPZTの振動周波数を同時に参照信号とする必要があるため、オペアンプを利用した周波数加算回路を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きSNOMを利用した超音波の検出機構を構築する。まず、干渉計を動作させない段階で、サンプル基板表面のSNOM画像を取得する。次に、近接場光の散乱光を検出するために干渉計と周波数加算回路をロックインアンプに接続し、ヘテロダイン検出を行う。SNOMによる計測結果の参照とするための干渉計も構築し、両者を比較できるようにする。装置完成後に、プローブ-基板間の距離と散乱光の強度との関係を取得する。次に、SNOMによる超音波振動の検出を行う。超音波を1kHz間隔で出力し、その数倍の周波数でロックイン検出を行う。測定対象として、シリコン基板に100nm間隔でイオン注入を行い、アモルファスシリコン層のナノオーダーでのパターンを形成する。ナノ構造基板の超音波計測を行い、内部を可視化する計測を通じて、開発した装置のSNOM超音波計測の性能(分解能)の確認および実行可能性を評価する。
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