近接場光による超音波振動の検出を行うために、市販の原子間力顕微鏡(AFM)に光学部品を付加して近接場光顕微鏡(SNOM)を構築した。この装置は、共振周波数が約400 kHzで振動する先端半径が20 nm以下の先鋭なSi製のプローブを有し、2次元的に走査することでAFM像とSNOM像を同時に取得できる。半導体レーザをプローブ先端に照射し、近接場光を発生させる。すると、プローブと試料の相互作用により散乱光が発生するので、光電子増倍管でその強度を検出する。背景光の影響を排除するため、検出信号は周波数3Ωまたは4Ωで同期検波し、SNOM像を取得する。また検出信号の一方は、オシロスコープで検出信号の時間変化を観察する。 最初に、構築した装置の動作確認を目的として、試料表面の形状をAFMおよびSNOM機能で観察した。そして、そのAFM像とSNOM像での試料表面の形状を比較し、試料表面の凹凸によって近接場光の強度が変化することを確認した。その結果、試料表面の形状像は両機能によってほぼ類似の像が得られ、試料表面の高低差によって、近接場光の散乱光強度が変化することが確認できた。 次に、超音波トランスデューサによって試料表面を超音波振動させ、そのときの近接場光の散乱光強度の時間変化をSNOMで計測した。試料表面が超音波振動しているときに測定したSNOM信号の周波数スペクトルでは、想定される周波数においてピークが得られた。このことからSNOM信号には超音波振動が含まれていると考えられる。この結果から、近接場光による超音波振動の検出が可能であることが示唆された。しかし、超音波振動によるSNOM信号の強度変化の他に背景光と思われる影響によるノイズが現れていた。今後、背景光の影響を排して検証実験を続け、超音波振動の実時間波形の取得を試みる。
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