研究課題/領域番号 |
15K13830
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
巨 陽 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60312609)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 透明導電膜 / フレキシブル / シート / 金属性 |
研究実績の概要 |
(Ⅰ)金属性単層カーボンナノチューブの大面積成長 導電性の高いシートを作るために金属性SWCNTの作製を行い、触媒となる粒子の径の制御や用いる炭素源を最適化することにより、SWCNTのカイラリティと電子構造の制御を実現した。また、カーボンナノチューブシートの作製においてSWCNTの高さは約300μm必要であるため、その長さを有したSWCNTの大面積成長に必要な加熱時間、温度、触媒の種類や粒径等パラメータの最適化を行った。CNT作製において一般的な触媒としてFeが用いられるが、キャリアガスのエタノールの熱分解に伴い発生するH2Oによる触媒の酸化を防ぐために、酸化しにくいCoを触媒として検討した。また、高温時の基盤表面上の触媒の拡散による触媒微粒子の粗大化を防ぐために、SiO2基盤表面にAl2O3薄膜を予め蒸着した。さらにCNTの純度や、成長速度、高さと各パラメータとの相関を明らかにした。垂直配向性や密度の評価を行い、カーボンナノチューブシート作製に向けた垂直配向度と密度を兼ね備えたCNTフォレストの作製を実現した。 (Ⅱ)単層カーボンナノチューブシートの作製 上記で作製した金属性SWCNTフォレストにおいて、フォレスト端のCNTを引っ張ることにより、引張り力に誘引されたファンデルワールス力により隣接するCNTが結合し、CNTシートの作製に成功した。また、ファンデルワールス力によるCNTのシート化の機序を明らかにするための評価モデルを構築した。さらに、CNTの直径、長さに応じてCNT間の空間空隙を制御する手法を確立した。空間空隙の制御を実現するため、触媒金属を塗布した後の加熱が重要であり、原子間力顕微鏡を用いて、加熱後の粒子の形状や密度を把握することにより、それに関係するパラメータの最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定されていた研究計画を順調に実施した上、1500μmの高さを有するSWCNTの大面積成長法を新たに見出した。
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今後の研究の推進方策 |
(Ⅲ)カーボンナノチューブシート透明導電膜の作製 高純度なCNTフォレストを用いて作製された単層カーボンナノチューブシートの双層直交構造を最適化し、抵抗率:50 Ω/cm2以下、透過率:88 %以上のカーボンナノチューブシートフレキシブル透明導電膜の作製方法を確立する。従来の透明導電膜においては、抵抗率あるいは透過率いずれかに特化したものは作製されているが、バランスよく両者の目標値を満たしているものはない。そのため、作製した単層カーボンナノチューブを組み合 わせることで、導電率の向上を図り、抵抗率および透過率ともにITO膜の代替を可能となる透明導電膜の実現を目指す。さらに、カーボンナノチューブシートのメリットとして、CNTフォレストから数十~数百mの長さのシートが作製可能であるということがあげられる。そこで、透明導電膜の大量生産・低コスト化を実現し、事業化につながるプロセスの確立を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品が当初の予定より安価で購入する事ができたため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品を購入する際に併せて使用する予定である。
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