本研究では,次世代ナノ精密機械加工技術に要求される超精密工具刃先ナノレベル形状評価実現を目的として,集光レーザービーム(レーザープローブ)を利用し,光の回折限界を超えた分解能で3次元工具エッジ形状を非接触かつ高速で評価する「ナノエッジ効果レーザープローブ」の原理確立に挑戦するとともに,ビームウェストにおいて回折限界にまで絞られたマイクロサイズのレーザープローブを工具刃先エッジに照射した際の通過光量をもとに,nm級の分解能でエッジ位置を検出(ナノエッジ効果)するエッジ検出手法と,レーザープローブを生成するレンズの原理性質を利用したレーザープローブ走査手法に立脚した超精密刃先形状評価装置を構築し,従来の光計測技術では困難な,光の回折限界を超えた先端丸み径を有する工具刃先の非接触・定量的評価を実現することを目的としている. 最終年度となる28年度は,前年度に試作したレーザープローブ光学系について,ケプラー型のレンズ対を平行駆動するレーザー走査機構を導入するとともに,工具XYZ 位置決め用の変位センサ内蔵圧電(PZT)ステージを組み込んだ,工具エッジ3次元ナノ形状評価装置プロトタイプを構築した.これにより,刃先丸み径に沿ったビーム入射角度走査を実現した.また,構築したプロトタイプを用い,刃先丸み径10μm程度の超硬バイトを対象として原理検証実験を実施した.工具先端形状は電子顕微鏡での測定結果と比較してその妥当性を評価した.その結果より,ビーム入射角走査機構に用いる1軸リニアステージの運動誤差が刃先丸み径測定結果に大きく影響することを実験的に明らかにした.この結果を踏まえ,光学式の角度センサを導入して上記1軸リニアステージの運動誤差を測定し,その影響を補正するアルゴリズムを構築するとともにその有効性を評価した結果,補正により刃先丸み径の評価が実現できる見通しが得られた.
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