研究課題/領域番号 |
15K13840
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
周 立波 茨城大学, 工学部, 教授 (90235705)
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研究分担者 |
清水 淳 茨城大学, 工学部, 教授 (40292479)
小貫 哲平 茨城大学, 工学部, 准教授 (70400447)
尾嶌 裕隆 茨城大学, 工学部, 講師 (90375361)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 強誘電体 / 圧電効果 / 焦電効果 / 自発分極 / 内部応力 / 機械特性 / 物理特性 |
研究実績の概要 |
イルメナイト型結晶のLiTaO3やLiNbO3は,代表的な強誘電体材料で,圧電効果と焦電効果をあわせ持つ特性を有し,機能材料として圧力センサ,赤外線センサ,SAWフィルタなど様々なデバイスに用いられている.一方,被研削材として“軟脆”的な機械特性を示し,機械的,熱的衝撃で割れが生じやすく,研削や切削による機械加工が極めて困難である.これまで破壊メカニズムについては主に被削材の機械強度と応力分布の観点から考察してきたが,十分に解明されていない.H27年度には,強誘電体材料の物理特性の影響を解明するため,次の2つの研究課題に取り組んだ. 1.圧電・焦電効果によるLT比削材の機械強度の低下 異なる温度プロファイルに制御したLTウエハに対して,マイクロインデンテーション実験を行い,材料の高度と破壊靭性について評価した.得られた実験結果によれば,温度の高低にかかわらず恒温条件下に比べて,変温条件下のLTの硬度が約20%低下し,また破壊靭性が約40%低下したことが明らかにした.またその原因は,圧電・焦電効果によるLT強誘電体の分極,そして相変換によるものと考察している. 2.研削中における圧電・焦電効果による応力の定量推定 研削中のLTウエハは研削抵抗および研削熱に曝されている.したがってウエハには,通常の研削抵抗に起因する機械的外部応力σ1に加えて,圧電・焦電効果による分極に起因する電気的内部応力σ2,さらに熱膨張による熱的な応力σ3が同時に作用している.この三つの応力成分について定量的に推定した.その結果,電気的内部応力と熱的な応力が全応力の80%に上ることを解明した.また,外部応力が全く作用していないLTウエハが200℃程度の温度変化だけで破壊した動画撮影に成功し,研削中のウエハ破壊の主因は従来から考えてきた研削抵抗ではなく,電気的内部応力と熱的な応力であること裏付けた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに,ほぼH27年度に加工中ウエハの破壊に至る主因を解明し,また結晶方位との関連性も解明つつある.次のステップの「圧電・焦電効果の抑制,除去さらに有効利用の方法を探索する」へ進む基礎が確立した. また,得られた研究成果を学術誌論文1編にまとめ発表した.
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今後の研究の推進方策 |
H28年度には,圧電・焦電効果の抑制,除去さらに有効利用の方法を探索するために,次の2つの解決策を提案し,実際の研削実験においてその効果を検証する. 1.受動的な方法 (1)分極の抑制:研削液を5℃の低温に制御し,環境制御を通して応力(圧電効果)と温度(焦電効果)による分極を抑える.(2)分極の影響の除去:研削液に電解質を添加して比削材に電気的なショート回路を作成し,誘電分極で生成された電荷を効率的に除去する. 2.能動的な方法 外部の電界の印加,逆温度プロファイルの制御など,機械的な応力,電気的な応力及び熱的な応力の3成分が互いに相殺できる方法を考案し,効果を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度は,マイクロインデンテーションによる押し込み実験が主であるため,必要なLTウエハが比較的少ないサンプルの数で済んだ.H28年度では,「圧電・焦電効果の抑制,除去さらに有効利用の方法を探索する」ため,実機上の研削実験を行う必要があり,その場合大量のLTウエハサンプルが比削材として用意しなければならない.
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次年度使用額の使用計画 |
早い時期に研削加工用のLTウエハサンプルの購入し,実機上の研削実験と評価を実施する.
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