研究課題/領域番号 |
15K13848
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大参 宏昌 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00335382)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノシリコン / 水素プラズマ / 微粒子 / 精製 / 金属級シリコン |
研究実績の概要 |
シリコンナノ(n-Si)粒子は、次世代デバイスのキーマテリアルとして大きな注目を集めている。本研究では、その廉価製造に向けて、Siバルク材からn-Si粒子を高効率に形成する次元変換ソフトプロセスの開発を目的としている。具体的な目標は、非平衡高圧水素プラズマによる蒸発促進現象がSiに対して発現することを確認し、その支配因子を探究するとともに、直径50nm以下のn-Si粒子の合成手法として、その適用可能性を検証することである。 本年度の取り組みとして、現有のSi処理装置に設置可能なマイクロ波ジェットプラズマ源の開発、平行平板型高圧水素プラズマによる低融点金属を用いた蒸発実験、ならびに狭ギャップスリットプラズマ源を利用したMG-Siのエッチングとその生成物の確認を行った。本研究では、Si溶融熱源としてプラズマによる加熱効果の利用を企図しており、これに向けたマイクロ波水素プラズマトーチの開発を行った。試作したプラズマ源を用いて大気開放下にてHe、N2、乾燥空気ならびにArをキャリアガスとしてプラズマを生成したところ、いずれのガスを用いた場合にもプラズマジェットの生成が確認された。そこで二線強度比較法によりガス温度を求めると、プラズマ生成条件に依存して、2000Kから4000Kの範囲のガス温度のプラズマを生成できる事が分かった。この作製したノズルをSi処理装置に設置し、He、ArならびにH2ガスを用いてプラズマジェットの生成を試みた。その結果、各々純粋なガス雰囲気においては、装置の許容動作条件においてジェット状プラズマを生成することは困難であり、二種類のガスを同時に供給する事が重要である事が分かった。この知見に基づきジェット装置を改良した結果、水素含有雰囲気下にてジェットプラズマを生成する事に成功した。このプラズマのガス温度は、最大4000K程度であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、バルクSiを原料に用い、高純度・高品質なナノSi(n-Si)粒子の形成を可能にする、次元変換プロセスの開発を目指している。本年度の目標として、Siを溶融可能なガス温度を有するプラズマを生起可能なプラズマ源の開発、ならびに金属級Siを水素プラズマに曝露した際に生成される物質の同定を設定していた。前者に関しては本年度新たに設計製作したノズル電極によりSiを溶融するに十分なガス温度のプラズマの生成を確認し、さらには、クローズドな実験系で水素混合ガスを供給する場合において、プラズマジェットを生成するために必須となるガス供給方法を見出している点、さらにはこの閉空間で生成された水素プラズマにおいても4000K程度のガス温度が得られている点で、次年度の研究進展と最終目標の達成に向けた準備が着実にできていると判断できる。さらに、後者では、MG-Siと水素プラズマの反応により、SiH4と同時にSi系の微粒子が生成されていることが確認できており、本研究の最終目標達成に向けて着実なデータの蓄積が出来ていると判断したため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、大きな注目を集めているn-Si粒子の廉価製造技術の確立に向けて、非平衡高圧水素プラズマによる溶融物質の蒸発促進現象をSiに適用することを試み、本蒸発促進現象の支配因子を探究するとともに、直径50nm以下のn-Si粒子の合成手法として、その適用可能性を検証することである。今後は、開発したプラズマジェット源、ならびに平行平板型高圧水素プラズマ源を用いて、バルクSiからn-Si粒子を生成し、その粒径制御にかかる支配因子を、プロセス雰囲気中の水素濃度、全圧、投入電力、プラズマ中のガス滞在時間(即ちガス流速)、さらにはプラズマ端からの距離に着目し、これらのパラメータとn-Si粒子の粒径との相関を明らかにする。また、得られるn-Si粒子の性状と作製パラメータの相関を明らかにするため、赤外吸収分光法によりn-Si粒子の表面終端状態、ならびにSi-H結合密度を評価するとともに、電子スピン共鳴法により未結合手の密度を測定し、粒子の表面終端状態を明らかにする。さらに、n-Si粒子の結晶性(非晶質or結晶?)を、ラマン分光法、透過電子顕微鏡、さらにはX線回折を用いて明らかにする。最後に、本手法により低純度な金属級Siバルク材からn-Si粒子を形成し、金属級Si中の金属不純物が、どの様にどの程度輸送されるかを明らかにする。金属濃度は、誘導結合プラズマ質量分析法で測定し、平均情報として得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた誘導加熱式サンプル加熱溶融機構に代えて、最低限の目的のみが達成可能なプラズマ加熱方式を採用したこと、さらには他の研究プロジェクト終了に伴い、Siの溶融が可能なパルスレーザーシステムを本研究で使用することが可能になったことで、Si溶融装置に予定していた予算が圧縮できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の研究方策に記載した通り、水素プラズマによる蒸発促進効果を用いてn-Si粒子の作製実験とその特性評価が主な計画内容である。未執行分は、本研究で新たに採用する事となったプラズマ加熱に用いる電極、パッキン、絶縁フランジ等やレーザー加熱システムに用いるレンズ等の消耗品への充当を予定している。また、n-Si粒子の特性評価には、外部機関での測定も必要であり、その際の測定点数、ならびに対象元素を当初予定よりも拡げる事で、実験データの充実に向けて未執行分を充当する。
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