本年度は、水素プラズマを用いた蒸発促進作用によりどの様な微粒子が生成出来るかを詳細に検討するため、昨年度から継続して平行平板型高圧水素プラズマによる蒸発促進作用による生成物の分析を進めると同時に、狭ギャップスリットプラズマ源を利用したSiのエッチングとその生成物の確認・評価を行った。 平行平板配置型の水素プラズマ蒸発促進では、高温を用いず簡便に基礎的現象を確認できる低融点金属であるInを利用した。実施した実験条件では、450°CのIn原料温度で最大7.5mg/sの蒸発速度が得られることが確認された。この蒸発速度は、450°Cの熱蒸発速度の一千万倍である。また蒸発したInを対向側水冷電極上に設置したSi基板により回収し、その形態を電子顕微鏡により観察・評価した。微粒子の粒径は、電子顕微鏡で確認できるものとして、20nmから5umの微粒子が生成されていることが分かり、希ガスの添加により微粒子の形状が変化する様子が確認された。さらにプラズマに長時間曝露される基板上では、微粒子の生成よりも50nm程度の細孔を多数有するポーラスな微粒子が形成される事が分かった。 一方、スリットプラズマ源を利用したSiのエッチングと生成ラジカルの凝集により微粒子の生成を試み、Si基板上へ回収し、その評価を行った。赤外吸収分光から、形成されたSi微粒子は水素終端されており比較的安定であるが、長時間の大気曝露により徐々に酸化反応が進行し、最終的にSiOもしくはSiO2リッチな微粒子となる事が分かった。また、ラマン分光により形成したSi微粒子の結晶性は、結晶、ならびにアモルファスのものが混在している事が明らかとなった。さらに生成したSi粒子は、200nmから数umの粒径に凝集しているものの10-20nm程度の粒径をもつSi微粒子が形成されることが分かった。この結果、バルクSiからナノ粒子Siの生成に成功した。
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