研究課題/領域番号 |
15K13850
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
今井 健一郎 神奈川工科大学, 工学部, 准教授 (00308537)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 難削材料 / 振動援用加工 / 研削加工 / 切削加工 / 加工熱 |
研究実績の概要 |
難削材料の研削加工の容易化を検討するため,加工熱の抑制に着目し,その手段として超音波振動の援用による研削ホイールと被削材の断続的な接触による加工を試みている.昨年に引き続き1)振動援用時の除去プロセスと砥粒切れ刃のパルス力の関係,2)砥粒による微細な除去とホイール全体としての大切込み加工の両立,3)研削ホイールと被削材間の低摩擦化,について検討した. まず,1)についてはダイヤモンドバイトに振動(1.0-1.5kHz)を援用して合成石英の加工を行い,その除去過程における切削抵抗の変化から除去機構を考察している.これにより,硬脆材料の延性モード研削加工における砥粒の除去機構も推察し,加工条件の最適化につなげたいと考えている.2)については硬脆材料であるアルミナセラミックスと耐熱合金の64チタン合金を用いて研削加工を行い,異なる特性の材料でも,振動援用時の方が除去量が多くなることに加え,低荷重でも加工が可能なことを実験的に明らかにした.3)については,研削抵抗の2分力比が摩擦係数に依存するとの仮定に基づき実験を行い,現段階では2分力比と加工熱の発生に相関があるのではないかと推察する結果を得ている. 以上より,1)では工学的な観点から振動援用の効果を考察でき,2)については工業的な観点からみた振動援用の効果を示すことができる見通しを得たと考えている.3)については,本課題の主テーマである加工熱の抑制につなげるべく,研究を遂行している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れた主な理由は,以下の2点である. a)合成石英の振動切削加工において原因が特定しない加工痕への付着物の発生があり,これがダイヤモンドバイトに逃げ面に起因する結果であると判るまでに2ヶ月以上かかった.これについては,バイトを発注する際に追加工を依頼する形で対応していく.尚,これにともない,方形型の切れ刃の製作および実験を行うことができなかった. b)研削抵抗の測定で使用していた記録計の不調により,途中からデータロガーの機種および設定を変更した.この適切な設定を検討するのに時間を要した.現在は,概ね改善されている.
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今後の研究の推進方策 |
以下の3点に焦点をあてて,実験的検討を行っていく予定である. 1)H28年度に行う予定にしていた方形型の切れ刃を製作し,延性モード切削加工の除去機構について実験的検討を進める.具体的には,研削ホイールの砥粒にみたてた大きな負のすくい角と浅い逃げ角の形状を予定している.実験はFast・Tool・Servo機構を用いた切削装置で振動(1.5kHz以下)し,その時の加工抵抗と加工面状態の比較より,振動援用の効果で,工具への負荷が減ることを確かめる予定である. 2)被削材を硬脆性材料のアルミナセラミックス,延性材料の64チタン合金に絞って,振動援用研削加工を行い,加工熱発生の問題とホイールと被削材間の摩擦の違いにともなう加工熱の発生の違いを明らかにしていく.この2つの大きく特徴が異なる材料の加工結果を対比することで,加工熱の抑制に必要な因子を特定していく予定である. 3)合成石英の加工とともに,単結晶SiCの振動援用切削・研削加工を行い,将来のパワー半導体として期待されている材料の加工において,振動援用の効果がどのように表れるかを実験的に確かめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度に行う予定としていた方形型の切削用ダイヤモンドバイトを,実験計画の遅れのために発注していないことが主な理由である.これには10万円程の支出を考えていたが,一方で使用している切削用バイトの修正研磨が必要となり,差し引き約3万7千円の差額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度に沖縄で開催される国際会議での発表を予定している(査読後,確定は6月),その費用に一部に充当する予定にしている.
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