鉄-コバルト粉末を内包したチタンカプセルインプラントの生産手法として,代表者が発明した特許「箔の絞り加工」による試作カプセル生産用ダイセットを構築するための実験を遂行した.加えて,粉末を媒介したTi箔の絞り加工の数値解析手法として構築した有限要素法解析手法によりTi箔の破断箇所の同定を調査した.その結果,ダイテーパ部における最大引張応力発生箇所がこれまでの実験における破断箇所と一致したため,応力集中を防ぐように粉末の拘束状況を変化させてしわ押さえ力の適正化を試みた.しかし,破断発生を回避するに十分な拘束状況を作ることが困難であることがわかった.そこで,深さ0.8mm程度まで絞り加工を施した試験片を押出し加工により長尺化するものとし加工限界の向上がなされるかどうかを解析した.押出しテーパ角を45°の場合と25°の場合について調査した結果,両者とも密閉押出しコンテナ内の静水圧成分により絞り試験片は破断することなく,特に25°の場合はφ0.8,長さ1.6mm程度のカプセル状になるまで押出し成形できることが明らかとなった.この結果を受けて実際に押出しダイスを製作し実験を行った結果カプセルの長尺化に成功した.試作カプセル生産用ダイセットは粉末を媒介した絞り加工を第一工程とし,押出し加工を第二工程とする成形パスを実現するための順送金型が必要となるものの,チタンカプセルインプラントの大量生産手法として実用化ができると考えている.なお,実験室で製作したφ0.8試作カプセルの発熱実験は本研究期間内に終了することはできなかったが,これまでの装置で試作成功したφ1.0×1.0mmカプセルで既に良好な性能を得ており,これについては本研究課題の連携研究者である奈良県立医科大学分子病理学講座國安弘基教授の研究グループにより自己発熱インプラント材としての実用化に向けた検討が実施されているところである.
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