研究課題/領域番号 |
15K13852
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
明石 剛二 有明工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10202516)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 切削加工 / 穴加工 / BTA方式工具 / セミドライ / 切削力 |
研究実績の概要 |
本研究は,穴あけ加工時に工具にかかる負荷を低減させることのできる新たな切削機構を実現することを目的としている.本研究を遂行することで工具にかかる負荷を低減させることが可能となり,環境保全対策のためのセミドライ深穴加工の実現化等が期待できる.具体的には,工具負荷を大幅に低減できる切削機構を提案し,試作工具を用いて加工実験を実施し,新たな切削機構が優れた性能を発揮することを明らかにする.さらに,試作工具に新たなアイデアを付加し,多方面での利用を目指した新型工具の開発を行い,幅広い応用分野での実用化への指針を得ることを目指している. 平成27年度は,回転運動方式を用いた新たな切削機構の検討を主に行った.穴加工における工具にかかる負荷が他の加工方法と比較して大きくなるのは,現在の機械加工における穴加工では,工具中心を回転軸とする方式であるために工具中心部では速度が0となることや切込み量が工具半径となることが主な要因である.まず,工具に作用するトルクを低減できる方法を提案した.次に回転中心での速度が0となることにより工具中心切れ刃では切削が行われず,工具の中心部は,くさびによる作用と同じ効果となり,そのことに起因して大きな軸力が発生する.これに対しては工具の中心部の切削機構と外周部の切削機構を異なる方式とし,確実に切削を行わせれば,工具の軸方向にかかる負荷が減少すると考え,工具中心部で切削速度が0とならない機構を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,第1段階である新たな切削機構の提案と機構設計,第2段階である新型工具の開発,新型工具の幅広い適用性と実用化への指針を得る最終段階の3段階に分けて研究計画を立案している. 第1段階の平成27年度は,回転運動方式を用いた新たな切削機構の検討を主に行った.現在の機械加工における穴加工では,工具中心を回転軸とする方式であるために工具中心部では速度が0となることや切込み量が工具半径となることが主な要因であり,すなわち,工具中心を回転軸とする方式では,外周に向かうほど切削速度が上がり,効率的な切削ができ切削力は小さくなるが反対にトルクに関しては外周ほど回転半径が大きくなり,その値は増す.切込み量が大きい場合,加工中に工具に作用するトルクが大きくなり,工具にねじれが生じ,破断損傷することもある.下穴のない加工物に穴加工を行う場合,切込み量が工具半径となることは避けられないが,ここで工具に作用するトルクを低減できる方法があれば,問題の一つは解決できる.次に回転中心での速度が0となることにより工具中心切れ刃では切削が行われず,工具の中心部は,くさびによる作用と同じ効果となり,そのことに起因して大きな軸力が発生する.そこで,工具の中心部の切削機構と外周部の切削機構を異なる方式とし,確実に切削を行わせれば,工具の軸方向にかかる負荷を減少させることができる.具体的には,軸力は工具中心部の回転方向を変えることで速度0となる工具切れ刃の個所をなくし,トルクは外周部を半径方向に対して2分割して,それぞれの回転方向を逆にし,2分割した切れ刃の長さを最適化することでお互いのトルクを打ち消しあせた.切削機構部のみを有する試作工具の製作およびそれを用いた基礎加工実験を行い.切削力やトルクの状況および切りくずの排出などの基礎データを取得した.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,第2段階として,さらに斬新なアイデアである切削機構として中心部の往復運動方式を提案する.工具中心部を回転運動でなく,工具軸方向の運動を考え,モグラ方式穴加工を実現すべき,機構を提案する.この場合,削岩機のような打撃を加えることができる役割も付加できる設計とする.この斬新なアイデアの実現は,申請者らが研究を進めているボトルボーリング加工法で提案している切れ刃を加工中にスイングさせる機構をヒントとして基本設計を行う.また,並行してすでに構築している空気吸引式BTA方式深穴加工法におけるセミドライ加工システムに前年度提案した回転運動方式試作工具を用いた加工実験を行い,その性能の検証も行う. さらに,加工時に発生する工具負荷を極力低減させることが可能な切削機構を実現することで,新たな自由形状の曲がり穴加工法を確立させ,加工時間の短縮・良好な加工面性状を得ることができる革新的な技術開発を目指す.通常の穴加工では工具の保持・推進や回転はシャンクを介して行われるが,そのシャンクは当然剛性が高いために工具先端部を自在に動かすことは不可能である.そのために曲がり穴加工を可能にするためにはシャンクをなくし,工具先端部のみで工具自身を保持し,推進する必要がある.そこで,自走式工具を実現化するための推進機構の設計を進め,一定の曲率を持つ曲がり穴の加工を行い,問題点等の抽出・解決のヒントを得る.
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次年度使用額が生じた理由 |
試作工具製作用に使用したダイヤモンド砥石の数をNCプログラムの工夫により購入を減らすことができた.背景として,次年度計画している別機構での試作工具製作において,より複雑な切れ刃成形が必要となることが予想され,その際の成形用砥石の追加購入が必要となる可能性があることを考慮した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に計画している新たな機構を有する試作工具における切れ刃成形用砥石の追加購入に充てる.
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