本研究は,穴あけ加工時に工具にかかる負荷を低減させることのできる新たな切削機構を実現することを目的としている.本研究を遂行することで工具にかかる負荷を低減させることが可能となり,環境保全対策のためのセミドライ深穴加工の実現化などが期待できる.具体的には,工具負荷を大幅に低減できる切削機構を提案し,試作工具を用いて加工実験を実施し,新たな切削機構が優れた性能を発揮することを明らかにする. 平成29年度は,以下の成果が得られた. 1)自走式工具の開発において,如何に工具自身で支えて目的とする方向へ進めるかが最難関の課題となるが,前年度の研究成果を活かし,工具への負荷が大幅に低減できる新たな切削機構を実現し,実用化への指針が得られた.2)小径化への試みにおいて,環境対策とは逆に曲り穴加工では試作工具をできるだけコンパクトにしたい.そこで,想定している試作工具径は30mmであるが,さらに小径化を睨み改良設計を試みた.3)ロボットへのアタッチメント工具としての検討では,新たに提案する切削機構(特に往復運動方式)を提案し,金属加工だけでなく,さらに幅広い分野への対応が可能であることを明らかにした.4)地熱抽出及び宇宙探索への応用においては,コンパクトで工具負荷の小さい工具で自由形状の穴加工ができるために地底探査用ロボットなどへの応用も可能であると考え,それらに対する設計指針を得た. 以上のことから,提案した切削機構を用いた工具の幅広い適用性と実用化への指針を得ることができた.
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