研究課題/領域番号 |
15K13856
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 敏郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10209645)
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研究分担者 |
飯盛 浩司 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50638773)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 設計工学 / エナジーハーベスト / 境界要素法 |
研究実績の概要 |
電磁材料の形状を設計するためにトポロジーの変化を伴う形状変更毎に3次元電磁場解析と固有振動数解析を多数回繰り返す必要があり,高速な電磁場解析法が必要となる。高速な電磁場解析を行う境界要素法として,マックスウェルの方程式に基づく基本解を多重極展開し,得られる連立方程式を反復法で解く方法が用いられているが,連立方程式の係数行列が悪条件であり,計算に時間がかかるという難点があった。マックスウェルの方程式は、電場や磁場をベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャルを用いて解くことも可能であり,その場合,通常のヘルムホルツ方程式の解法と近い解法に帰着させることができる。大規模な連立方程式を、係数行列の低ランク近似により少ない記憶容量と計算量で解く方法が、Adaptive Cross Approximation (ACA)と称して提案されている。また,境界要素法では波数が基本解中に含まれており,電磁波動問題のの共振周波数の計算は非線形固有値問題となる。そこで本年度は,まず電磁波動問題を境界要素法で高速に解く方法として,ACAに基づくHマトリックス法の理論的考察,および経路積分による境界要素法を用いた電磁波動問題の共振周波数の解析法についてまず,理論的考察を行い,トポロジー導関数の計算,トポロジー最適化を行う上で必要となる基本ソフトウェアの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
境界要素法を用いた大規模な電磁波動問題を、従来用いられている高速多重極展開のアルゴリズムを用いないでAdaptive Cross Approximation (ACA)に基づくHマトリックス法で省記憶容量と高速化を図る方法の定式化を行うことができた。さらに,トポロジー最適化に移行するには考えている境界条件下の電磁波動問題と同じ場の形状に対する随伴問題を2回解析する必要があるので,従来の高速多重極展開ほうでは,同じ係数マトリックスの問題を実際に2回反復法で解く必要がある。そこでHマトリックス法に基づく連立方程式のLU分解に基づく直接解法の定式化を行うことができ,実際の数値計算例により高速化,省記憶容量が図られていることを確認することができた。また,電磁波動問題の高精度な固有振動数の解析も,SS法を境界要素方程式に適用することにより可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
電磁波動問題におけるトポロジー導関数の数学的表現をまず求める。真空中,あるいは誘電体中に別の誘電率,透磁率をもつ無限に小さい誘電体が発生したり,無限に小さな誘電体を取り除いたり,動態が発生したりした場合の目的汎関数の変化率を求める。さらに,エナジーハーベスティング・デバイスへの拡張を考え,三次元空間中の曲面を設計領域とし,曲面の制約を課したトポロジー導関数の導出とその検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,Hマトリックス法による高速化の理論的考察と境界要素法による電磁場解析解析法のアルゴリズムの開発に時間を要したため,実際の大規模な計算に着手する段階に至らなかった。このため,大容量の高速なワークステーションを購入する段階とならなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
基本ソフトウェアの開発が着実に進行しているので,大容量の高速ワークステーション,および国際会議などにおける学会参加費と旅費,論文掲載料等に使用する。
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