自動車のディスクブレーキパッドは,走行中もブレーキディスクと僅かに接触していて,これが自動車燃費を悪化させる引き摺り抵抗となっている.市販のブレーキパッドを鋳鉄製ディスクに押し付けて,厳しい摩擦条件で摩耗させた後,軽い接触で摩耗痕を残した.厳しい摩擦条件での発熱によりパッド表面が膨張し,中央に設けられたスリットが無い場合は冷却後に接触面全体が凹形状となる.中央のスリットはそれを避けるために設けているが,凹形状が左右に分かれた結果となり,走行中にディスクに吸着する結果を招く.そこで中央のスリット部に45° のスリットを加えた改良ブレーキパッドを作製した.制動時のパッド押し付けでは,45° のスリット部は他と比べ剛性が低いために面圧が低く摩耗しにくい.この改良ブレーキパッドを使い,厳しい摩擦条件によりパッドを1 mm摩耗させた後の表面プロファイル測定結果では,中央部分が他よりも60 μm程度高くなった. 市販ブレーキパッドと改良ブレーキパッドを厳しい摩擦条件で摩耗させた後,動力計を介して旋盤刃物台に取り付け,周速38 km/hで回転する鋳鉄製ディスクに近づけた時の垂直方向押し付け力と,接線方向の摩擦力を測定した. 市販ブレーキパッドでは,パッドを回転するディスクに近づけるにつれ垂直力はマイナス,つまり引き込まれる力が発生し,距離20 μmまで接近すると部分的な接触が始まり距離15 μmからは反発力となる.問題は垂直力が0となる距離15 μm前後において接線力が発生している事であり,これが引き摺り抵抗の原因となっている. 改良ブレーキパッドでは垂直力は常にプラスであり,部分的な接触が始まる距離15 μmまでは接線力は0である.このパッドを使うことで燃費は2.5 %改善することが期待できる.
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