研究課題/領域番号 |
15K13862
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福西 祐 東北大学, 工学研究科, 教授 (60189967)
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研究分担者 |
伊澤 精一郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90333856)
西尾 悠 東北大学, 工学研究科, 助教 (70712743)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 風洞 / 非定常流 / 非定常空気力 / 空力特性 |
研究実績の概要 |
マルチファンタイプの突風風洞の開発に際して問題となったのは,シャッターを閉じた状態での気流の漏れと風速の立ち上がりの鈍さである.これは,シャッター閉鎖時の送風ファンの背圧上昇による空転が原因であった.そこでシャッター手前に排出路を設け,シャッターの開閉に同期させて流路を切り替えることで,ファンの背圧上昇を防ぎつつ風速の立ち上がり性能の改善を図った.昨年度,その効果をマルチファンを構成する1つのユニットを試作して検証したところ,ユニット拡大部の流路長さを短くすると,気流の空間一様性は低下するものの加速性能が向上することがわかり,排出路の有効性を確認することができた.しかし,排出路の設置方法に問題があり,このままの状態でユニットを組み合わせると,隣接するユニット同士の排出路が干渉して機能しないこともわかった.そこで本年度は,排出路の位置を見直すとともに, 流路形状を変化させることで更なる立ち上がり性能の向上を試みた.主な改善点は,(1) 排出路の位置をユニット拡大部側面に変えることでユニット間の干渉を減らすこと,(2) 格子とハニカムからなる整流部を新たに設けることの2点である.ユニット拡大部の開き角は5度あるいは7度に設定し,整流部の長さの異なる複数のユニットモデルを試作してその性能試験を実施した.その結果,整流部を設け得ると,立ち上がり性能は幾分低下するものの,その立ち上がり時間は従来のマルチファンタイプの突風風洞の1/3にまで短縮され,突風発生前後の気流の変動も大幅に抑制されることがわかった.また,立ち上がり時間の大半をシャッターの開放時間が占めていることから,電磁石によるリンク機構にばねによる復元力を加える改良を施したところ,シャッター開放に要する時間を従来の半分にまで短縮することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユニットモデルを用いた性能試験を通して,立ち上がり時間が短く,一様でかつ速度変動の少ない突風風洞の実現に向けた改善点が明らかとなった.立ち上がり時間については,適切なユニット拡大部長さを設定し,シャッター開閉機構を改良することで大幅に短縮された.また,適当な長さの整流部を設けることで,立ち上がり時間への影響を抑えつつ,気流の速度変動を大幅に低下させることもできた.その一方,気流の一様性についてはまだ改善の余地があることが明らかとなったが,この点についてはユニットを組み上げてマルチファンを構成してからでも改善が可能である.以上,細かな改善点は残っているものの,マルチファンタイプの突風風洞の基本設計はほぼ完了した段階にあり,研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
突風風洞の基本設計が完了したので,ユニットモデルを組み上げて突風風洞を制作し,その性能試験を実施する.また,現在の電磁石のON/OFFによるシンプルなシャッター制御系を見直し,空間的な平均風速だけでなく,速度勾配の向きや強さが時間的に変化するようなより柔軟な制御が可能なシステムの構築を目指す.次いで,開発した突風風洞を用いて非定常かつ非一様な流れを発生させ,その中に置かれた供試体の支持角度を動的に変化させることで,悪条件中を飛行する小さな飛翔体が遭遇するであろう流れを再現する実験を行う.そして.低レイノルズ数領域における飛翔体周りの流れ場を計測し,飛翔体に働く非定常な空気力を風洞実験により求め,このような環境下を効率よく飛行可能な飛翔体の理想的な形状を探ることが本研究課題の最終的な目的である.
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