本研究課題は,非定常な流れの中に置かれた物体周りの流れの特性を調べることを目標としたもので,そのような装置の製作に主眼を置いた。突風を発生させる方法として,送風ファンを常時回転させておきながらシャッターを開放する方法を採用した。この際に問題となったのは,測定部における風速の立ち上がりの鈍さであった。これは,シャッター閉鎖時の送風ファンの背圧上昇による空転が原因であると考えられた。そこで昨年度までは,単一ファンの簡易風洞モデルを作成し,シャッター手前に風洞外へ空気を排出する通気口を設け,シャッターを開くと同時にその排気口を閉じ,流路を切り替えることで,ファンの背圧上昇を防ぎつつ風速の立ち上がり性能の改善ができることを明らかにしてきた。 本年度は単一ファンモデルのさらなく改良を行った上で,それを組み合わせたマルチファン型突風風洞の作成と評価を試みた。単一ファンモデルの改良に関しては,シャッターと排気口を一つのモーターにより開閉するように変え,排気口もより大きく取ったモデルを作成して,その風速の立ち上がり性能を検証した。その結果,昨年度の単一ファンモデルの性能を維持しながら,シャッターの開閉と排気口の開閉の一元的な制御ができていることが確認された。 この単一ファンモデルを4個組み合わせ,整流部を設けて2x2のマルチファン型突風風洞を作成し,その性能を評価した。その際,各排気口を90°互い違いに設置することにより,排気の干渉を抑える工夫を施した。その結果,マルチファン型の風洞も従来の単一ファンの風洞と同様に駆動させることができ,単一ファンモデルと比べて風速の低下があるものの,従来のマルチファン型突風風洞において課題であった風速の立ち上がり時間はおおよそ25%改善し,さらに突風発生後の主流乱れも大幅に減少させることができた。
|