研究課題/領域番号 |
15K13864
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 岳彦 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (10302225)
|
研究分担者 |
金澤 誠司 大分大学, 工学部, 教授 (70224574)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 気泡内放電 / 可視化 / レーザ誘起気泡 / 放電電流 / 帯電 |
研究実績の概要 |
本研究は,プラズマ誘起気泡の崩壊時に超高密度電荷を集積させることで,エネルギー収束を飛躍的に高め,マイクロジェットの形成を利用したエネルギーに指向性を持たせる手法を開発し,プラズマ誘起気泡を利用した技術革新を提案することを目的としている. 平成27年度は,①レーザ誘起気泡を絶縁性液体中に発生させる.②液体を減圧し誘起気泡径を制御する.③気泡径が最大になったときにのみ気泡内に直接電極が露出できる装置を設計・作製する.④最大気泡時に気泡内にプラズマを生成制御する手法を開発することを目標に取り組み,概ね目標を達成できた. 具体的には,ナノパルスレーザおよびミラー,レンズ,フィルターからなるレーザ収束光学系を構築した.ナノパルスレーザは波長532 nmパルス幅8 nsを単発で発振させ,導電性が低い超純水で満たした容器内の中心に収束させ,プラズマ誘起気泡を発生させることに成功した.次に,背景光,レンズ,超高速度カメラからなる可視化システムを構築し,レーザで誘起した気泡内に,先端を鋭利に研磨した直径0.5 mmの白金製電極が露出するように設置することに成功した.さらに,このナノパルスレーザから発せられた光をフォトダイオードで感知しトリガとして,超高速度カメラと放電装置を同期し,ファンクションジェネレータで立ち上げたパルス電圧を電圧増幅器で増幅し,気泡内で放電を行うことに成功した.気泡内の放電の自発光を,イメージインテンシファイアーを用いて撮影することにも成功した.放電電流と発光が確認できたことから,目標としたレーザ誘起気泡内の放電を達成することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に計画した,①レーザ誘起気泡を絶縁性液体中に発生させる.②液体を減圧し誘起気泡径を制御する.③気泡径が最大になったときにのみ気泡内に直接電極が露出できる装置を設計・作製する.④最大気泡時に気泡内にプラズマを生成制御する手法を開発することを目標に取り組み,目標を達成することができたため.なお,②の減圧については当初気泡が小さいと気泡内に電極を露出させることが難しいと考えていたため計画していたが,小さい気泡でも電極の位置決めに成功したため,本年度では取り組まなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,平成28年度は以下の計画を進める.⑤電荷内包気泡の崩壊過程を可視化する.特に,印加電圧の大きさによりどのように変化するか詳細に検討する.⑥高密度電荷が崩壊過程に与える影響を考察する.崩壊過程の末期は,気泡の形状が球形にはならず,大きく変形している可能性が高い.その変形の様子を詳細に高速度カメラで撮影し,変形の要因について考察を行う.⑦高密度電荷集積時に発光分析と圧力計測を行う.水中レーザ誘起気泡では,発光は極めて微弱で観測できないことが多いが,高密度電荷が集積している場合は,強い発光を伴う可能性が高く,分光解析により,発光種の特定を行う.また,崩壊時に発生する圧力波を計測し,通常のキャビテーション気泡と高密度電荷集積のケースで比較する.⑧マイクロジェット生成時の可視化と発光分析と圧力計測を行う.⑨高密度電荷集積時の気泡収縮の数値解析を行う.数値解析と実験結果との比較より,高密度電荷集積の気泡収縮・崩壊への影響を考察する.⑩キャビテーション気泡を利用した超高密度電荷集積法を提言する. 得られた成果をまとめて,超高密度電荷集積法の可能性について提言を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は,表面電位計を購入予定であったが,液体内の電圧を計測するための電位プローブを新たに開発したため,購入をしなくても計測が可能となり,当初予定した予算より少ない金額で研究を遂行できた.しかし,電位プローブの開発に当たり,学会等への情報収集や連携研究者であった金澤を研究分担者とし,放電や電位の計測法の情報交換を図ったため,次年度への繰り越しは60万円とした.
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,研究計画⑨における気泡収縮の数値解析の研究を海外研究協力者であるFarhat博士と共同で進めることになった.そのため,繰り越した60万円は主としてFarhat博士と研究打ち合わせならびに共同研究を行うための旅費として利用する.
|