本研究は,プラズマ誘起気泡の崩壊時に超高密度電荷を集積させることで,エネルギー収束を飛躍的に高め,マイクロジェットの形成を利用したエネルギーに指向性を持たせる手法を開発し,プラズマ誘起気泡を利用した技術革新を提案することを目的としている. 平成28年度は,平成27年度に作製したキャビテーション気泡内への放電装置を利用し,当初の予定通り以下について検討した.①電荷内包気泡の崩壊過程を可視化する.②高密度電荷が崩壊過程に与える影響を考察する.③高密度電荷集積時に発光分析と圧力計測を行う.④高密度電荷集積時の気泡収縮の数値解析を行う. 得られた結果を以下にまとめる.電荷内包気泡に与える影響を小さくするために,平成27年度に作製した装置を改良した.具体的には,直径0.5 mmの針電極を0.1 mm程度の針に変更し,0.5 μm単位で位置調整できるマイクロメーターを新たに採用し,気泡の中心に針が位置するように制御した.これにより,ナノパルスレーザーにより生成したキャビテーション気泡は針電極の影響をほとんど受けずに崩壊する.崩壊過程を100 ns間隔で連続撮影し気泡挙動を解析した.結果,放電により気泡内に帯電した電荷密度が高まると,気泡から水中へストリーマ状のチャネルが形成されることが明らかになった.この結果は,高密度電荷の集積は液体の絶縁性に依存していることを示唆しており,高密度電荷集積法の開発の基盤となる発見である.また,キャビテーション気泡内に帯電している場合の数値解析モデルの構築と挙動解析を行った.これにより,気泡内に電荷が存在する場合は,気泡内に不凝縮ガスが存在しなくても崩壊後に再膨張を起こすことを明らかにした.また,電荷が逃走しない場合は,崩壊時に高密度電荷の集積が可能であることを示した.
|