研究実績の概要 |
2015年度に設計・製作した実験装置を用いて,水中にメガヘルツ超音波(周波数0.95 MHz)を照射した場合に発生する定常流(音響流)によって駆動される格子乱流場の詳細な調査を行った。格子のサイズは格子間隔M=20 mm,格子幅4 mm(遮蔽率36%)である.計測には粒子画像流速測定法(PIV)を用い,平面内で速度二成分および渦度を計測した.さらに,格子によって形成される流動場の特性を明らかにするため,有限差分法に基づく時間発展格子乱流場の直接数値計算コードを新たに開発し,計算を行った.計算は格子幅と流入流速に基づくレイノルズ数が10,000と20,000の場合に対して実行され,計算格子数はそれぞれ2304^3および2048^3とした. 実験の結果,格子を設置しない場合でも平均流速の0.3倍程度の大きな乱れが存在していることが明らかになった.この原因として,超音波が水槽底面全体から照射されているわけではないため音響流が一様ではないことが考えられる.しかし,格子を設置することで,速度変動の大きさは同程度のままで変動値の空間一様性は向上した.しかし,この場合も等方性はあまり高くない結果となった. 計算の結果,格子棒による後流が発達するとともに互いに干渉し,一様な準等方性乱流を形成していく過程が明らかになった.また,格子幅と流入流速に基づくレイノルズ数が10,000の場合には粘性の影響が強く表れ,レイノルズ数が20,000の場合と散逸特性が異なることがわかった.本実験で用いたメガヘルツ超音波(周波数0.95 MHz)と乱流格子の場合,生成される乱流のレイノルズ数が非常に小さい(~1,000)ため,レイノルズ数を挙げることが課題として浮き彫りになった.このためには,超音波素子の変更とより大きな水槽(従ってより大きな格子)を用いる必要があると考えられる.
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