研究課題/領域番号 |
15K13868
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
酒井 康彦 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20162274)
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研究分担者 |
久保 貴 名城大学, 理工学部, 准教授 (20372534)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 流体工学 / 光ファイバ / 吸光光度法 / 濃度計測 / 化学反応 / 乱流 / 界面 |
研究実績の概要 |
平成27年度は当初の研究計画に基づき,以下の2つの研究を推進した. 超高分解能の光ファイバ型多成分変動濃度同時測定用プローブ及び計測システムの開発 (2成分計測):当初予定していた5μmのコア径よりもさらに小さな2.5μmのコア径を持つ光ファイバの先端に,レンズ加工されたGIファイバを融着することによりプローブ先端から100μm離れた位置に集光することが可能となった.ビームスポット直径は3μmと極めて小さく,測定体積はバンドル型光ファイバプローブの約1/700を達成した.これは吸光光度法を原理とする濃度測定用プローブの測定体積としては世界で最も高分解能である.なお,対向する光ファイバの光軸が同軸上にあるように1μm以下の精度を有する専用のプローブ保持具を制作し使用した.また,3台のレーザーダイオードモジュールから射出されるレーザービームを一つの光ファイバに入射するための合波系を設計・制作した.さらに受光用光ファイバに入射した光を波長ごとに分離するための分光器の調整を行い,2成分の濃度を同時に計測することが可能な計測系の構築を行った. 二次元乱流噴流での二次の化学反応場実験と微小スケール統計量解析:二次元乱流噴流中で計測を行うための準備実験として,軸対称噴流中での無反応染料の濃度変動の計測を行い,変動濃度スペクトル,確率密度関数分布等の微小スケール統計量を解析した.また,二次元乱流噴流装置で計測を行うための専用冶具の制作等の準備を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一の目的はレーザー吸光光度法による微小スケール多成分変動濃度計の開発であった.本年度は実際にプローブの設計から制作までを行い,従来のプローブに比べ約1/700の大きさの測定体積を実現することができた.さらに,無反応染料の計測に適用し,これまで不可能だった微小スケールにおける変動濃度の計測が可能であることを確認した.以上より,当初の目的に沿う微小スケール多成分変動濃度計の開発に成功したと判断される.ただし,実際に新型の光ファイバプローブを使用して,反応を伴う二次元乱流噴流中での多成分変動濃度の計測やデータ解析はまだ終了しておらず,これは次年度の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究で,新型光ファイバプローブの開発はほぼ終了したので,平成28年度は以下の研究を推進する. 1.二次元乱流噴流での二次の化学反応場実験と微小スケール統計量解析(平成27年度からの続き):反応を伴う二次元乱流噴流中での多成分変動濃度の計測やデータ解析は平成27年度に終了しなかったので,本年度に行う予定である. 2. 超高分解能多成分変動濃度同時測定システムの開発(3 成分への拡張):平成28年度には,さらに1波長分,新たにレーザーダイオード(青色)を追加することにより,3成分の濃度を同時測定可能なシステムにバージョンアップを行う. 3.二次元乱流噴流の乱流/非乱流界面での非平衡化学反応場の実験と統計量解析:上記の濃度測定システムを用いて,二次元噴流拡散場において連続競争反応(A+B→R,B+R→S)を対象とした実験を行う.物質R, S及び染料Cの3成分濃度同時計測を行う.物質AとBの濃度は,保存スカラー理論を用いて決定される.なお,速度場についてはHot-filmプローブにより測定する.今回は,特に乱流/非乱流界面近傍の化学反応場の非平衡的性質に注目し,得られた実験結果から従来の統計理論の検証を行うとともに,従来の乱流モデルや分子混合モデルと比較検討することにより,それらの検証と改良を行う.
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