研究課題/領域番号 |
15K13873
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
青山 善行 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (80108399)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 有機化学合成 / プラズマ / 界面 / 有機合成 / 誘電体バリア放電 / プラズマジェット |
研究実績の概要 |
本研究では遷移金属錯体触媒を用いないカップリング反応として,誘電体バリア放電を用いる方法を提案する。本手法は,誘電体バリア放電中に水を含むアルゴンガスを流して発生する大気圧非平衡プラズマジェットを,試料液表面に照射させて試料のカップリング反応を起こすものである。試料としてベンゼンを用い,ビフェニルの生成に関する実験を実施した。 外径8 mmの石英管内に直径3 mmの銅棒電極を挿入し,27.12 MHz,60Wの高周波を印加して,銅棒表面と石英管内壁との間に誘電体バリア放電を発生させた。この銅棒と石英管の間にArとバブリング方式によって供給される水の混合気体を上流側から流入させた。誘電体バリア放電により発生したプラズマは混合気体とともにプラズマジェットとして電極先端から放出され,下流に設置された試料液表面に照射される。使用した試料液体はベンゼンおよびエタノールである。実験後の容器内の試料について,ビフェニルの生成については薄層クロマトグラフィー,その他の生成物についてはGC-MSを用いて測定を行った。 実験後の容器内の残存液からビフェニルの生成は確認できなかったが,フェノールの生成が確認できた。バブリング方式を用いて水分子を誘電体バリア放電反応場に供給することによりOHラジカルが生成されていたことが考えられる.しかし,ビフェニルの生成が確認されていないことから,プラズマジェット照射を受ける液面において,ベンゼンのラジカル化は確認できなかった。ベンゼンとOHラジカル存在下において,化学親和力の高さからフェノールの生成反応が優先されたためビフェニルの生成が確認されなかったと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,プラズマによって,フェノール,ベンゼンジオールを合成し,最終的にこれら物質のクロスカップリング 誘電体バリア放電内に水とアルゴンの混合ガスを流してプラズマジェットを発生させ,ベンゼン液面へと照射することによるカップリング反応を試みた。薄層クロマトグラフィーによる分析で,生成目標であったビフェニルの生成は確認できなかった.一方GC-MSによる分析で,フェノールの生成が確認された。このことから,従来、クメン法でしか合成できなかった,フェノールを,ラジカル反応を用いて一段階のプロセスで合成できることを明らかにした。プラズマによるラジカル反応の一つを実現することができた。しかし、クロスカップリング反応を誘発するには至っておらず,今後はベンゼン同士のラジカル反応を誘発させる方法を検討していく。
|
今後の研究の推進方策 |
今後改善すべき点は下記の3点である。 (1)装置上の問題 試料である容器内のベンゼンはプラズマから受ける熱で蒸発するため,電極と試料との距離が一定に保たれなかった。そのため,試料に同じエネルギーのプラズマジェットが照射できていないことが考えられる。試料が減少すると,石英管内部での誘電体バリア放電から,銅棒電極先端と試料液面との間での放電に変化し,そのとき投入電力を増加させると元の誘電体バリア放電に変化するという現象が見られた。このことから本実験において試料液面に対する電極距離と誘電体バリア放電には何らかの因果関係があると考えられる。液面距離と放電の影響を調べる。 (2)放電形態の変更 プラズマ周波数を固定しているので,プラズマ温度を変更するのに限界がある。そこで、パルス放電を使って,低温プラズマから高温プラズマに至るまでプラズマの特性量を変化させ,分光測定から、励起されるラジカル種を確認する。 (3)量子化学計算ソフトウエア(ガウシアン)を使って、反応プロセスを推測する。
|