研究課題/領域番号 |
15K13877
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
島野 健仁郎 東京都市大学, 工学部, 教授 (90287475)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 流れの準三次元計算 |
研究実績の概要 |
平成27年度上半期においては、まず粒子法の準3次元解析への適用性についての検討を行ったが、粒子サイズの変更により面外への流出や面外からの流入を表現することはできないとの結論に至った。次に、平面内の速度2成分のうち1成分が既知な状況で3次元性パラメータD を計算する手法として、N-S方程式から圧力勾配を求める手法、N-S方程式から圧力を消去する手法等を考案した。いずれの計算手法においても奇数階の空間微分項が支配的になり、これを数値積分する際に積分範囲後半において誤差が蓄積していくことが分かった。これは、本課題のもつ本質的な問題であり、方程式の離散化→代数方程式の求解という手順を踏む限り回避することはできないとの結論に至った。 そこで平成27年度下半期では、各方程式を解くのではなく”最適化”の考え方を導入した新しい手法を考案した。新手法においては、Dの分布の仮定→Dと既知な速度成分uを代入して未知な速度成分vを算出→u、vを運動方程式に代入して各方向の圧力勾配算出、という手順を踏む。こうして算出された圧力勾配は圧力一価の条件を必ずしも満たさないが、複数のDの分布を計算して圧力一価条件の矛盾量が最小化されるものを最終的に採用する。この手法を流入・流出をもつ直方体チャンバー内の流れに適用したところ、細部には誤差が見られるものの面外への強い流出を再現することに成功した。本手法を適用した際の予測精度はDの分布の仮定法に依るところが大きい。現在のところ、既知な速度成分uのx方向勾配の分布にはDとの相関があるはずであるとの仮定に基づいてuのx方向勾配分布中にある極値の位置を参照してDを予測しているが、高精度化のために改善が必要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では平成27年度内に準3次元解析手法を完成し、28年度には完成した手法の精度検証と、心臓の超音波計測を対象とした拡張を行う予定であった。しかしながら、「研究実績の概要」の項で述べたように、平成27年度上半期に検討していたアプローチが本質的な問題をはらんでいることがわかり、下半期に方針を転換して新たな手法を構築し直す必要に迫られた。そのためにおおよそ半年の遅れが発生している。ただし、下半期から開発をスタートした新手法は今後の発展が期待できる性能を示しているため、遅れの大半を次年度に取り戻すことが可能と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度下半期に開発した新手法では3次元性パラメータDの分布を正確に予測することが精度を大きく左右することが分かっている。現状では、既知な速度成分uのx方向勾配の分布にはDとの相関があるはずであるとの仮定に基づいてuのx方向勾配分布中にある極値の位置を参照してDを予測しているが、今後は極値だけでなく値の正負が切り替わる点を合わせて参照するなどしてより高精度な方法の実現を目指す。また、任意のベクトル場は渦なしベクトル場と発散なしベクトル場に分解することが可能であるとするヘルムホルツの分解定理を利用して、D(2次元ベクトル場の発散に相当)を精度よく予測する方法についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は学会発表を平成27年度内に2回行うことを想定していた。内訳は研究代表者による発表と研究代表者が指導する大学院生による発表であり、前者の費用は旅費、後者の費用は旅費を伴う謝金としてそれぞれ支出する予定であった。しかし、平成27年度上半期に行っていた検討を白紙に戻して、下半期に新たな手法を構築し直す研究上の必要に迫られたため、学会での成果発表は大学院生による1回しか行うことができなかった。そのため研究代表者の旅費支出が0円となって結果的に次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は旅費として30万円を想定していたが、海外での国際会議にて発表をしてしまうと国内での学会発表に要する費用を支出することが難しくなる。そこで、次年度使用額は国内での学会発表のための旅費に充当することとする。
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