エアコンの熱交換器はこれまで直径6~8mmの銅管にアルミフィンを圧着したものが使用されていたが,一層の高効率化と冷媒封入量の削減を目指して,扁平多孔管を用いたオールアルミ製フィンレス熱交換器を開発した.オールアルミ製熱交換器は空気側フィンが凝縮水や着霜融解水の排水を妨げる問題があり,解決が困難であった.本研究では,扁平多孔管を極限まで薄くすることによって,扁平多孔管外部にフィンを挿入する必要のないフィンレス熱交換器を開発した.フィンがないことで凝縮水の排水問題は解決され,常に高性能な熱交換器として運転することができる. 厚さ0.6mm以下の超薄型扁平多孔管を製作した.多孔管内を冷媒が流れて十分な熱交換をするとともに,圧力損失が許容範囲内であるように,流路形状の最適化を行った.扁平多孔管内細管の形状が矩形である場合の伝熱特性を比較すると,アスペクト比が小さい正方形に近い流路のほうが良い結果を得ることが分かった.アスペクト比が大きいと液膜が破断してドライアウトが発生しやすいからである. フィンレス熱交換器を実際に製作し,フィン付き熱交換器と比較した.フィンレス熱交換器は凝縮水や除霜水の排水問題が改善され,空気側圧力損失が極めて小さくなることが分かった.フィンレス熱交換器は空気側伝熱面積が小さくなり,伝熱性能が劣るので,縦渦発生器を熱交換器前面に設置して,伝熱性能の向上を図った.その結果,凝縮水や除霜水の排水特性や圧力損失を悪化させることなく,伝熱性能がフィン付き熱交換器と同等となることが分かった.以上から,フィンレス熱交換器の開発する上での学術的な基盤となる有益な知見を得ることができた.
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