本研究では,高度な実験的検討により,鋼材の高機能化のために必要な高温鋼板の強水冷伝熱に関する基礎的・学術的な解明を進めた.既存のデータとして,従来の鉄鋼冷却研究における熱伝達率を用いて,最大必要な熱流束を前提として実験装置の設計を行った.それらの条件を踏まえて,本研究は以下のようにまとめられる. まず,当初の予測と伝熱特性が大きく異なった.従来の高水流密度条件あるいは単相流の水噴流の場合に近い熱伝達率値30 kW/(m2K)を前提に伝熱面を設計した.しかし,実験測定の結果,熱伝達率はその10倍以上の500 kW/(m2K)程度の値が比較的低過熱度域で測定された.したがって,高温固体面における熱伝達測定のためには,本実験用の伝熱ブロックと比して桁違いの加熱量を必要とすることが明らかになった.そのような研究を高温度域まで行うには,現在の形状に増して加熱部分を大型化するように,伝熱ブロックおよびその周辺装置の設計および製作を新たに必要とする.以上から,噴流熱伝達率が非常に大きかった高温面の高速水噴流岐点近傍の冷却に関して,基礎的・学術的な内容を明らかにすることの重要性とともに,その応用に関して更なる検討が可能であることが明らかになった.また,伝熱面寸法が小さいため,温度測定が難しくなる.測定精度の向上のための検討をさらに必要とする.
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