水からの水素生成法に関わる一つの原理として、予熱した気体へのピストン圧縮により水分解を生じる超高温を達成し、その気体が水蒸気を含むときにはその熱分解により水素・酸素が発生する。そしてその高温気体を急速に膨張させて低温化することにより組成を凍結して水素を取り出すことが出来る。以上の原理を実現する専用の急速圧縮・急速膨張装置の条件検討を行った。 圧縮条件として約1000Kへの予熱を行い、比熱比の高いアルゴン、ヘルウム等の単原子気体をベースガスとして常圧から圧縮比10程度の断熱圧縮によって3000K以上の高温を達成することが出来る。このとき水蒸気量に対して数パーセントの水素生成が期待できる。水素生成率が熱平衡分布のものに達するには、ミリ秒~数十ミリ秒程度の通常の圧縮装置の時間スケールでは瞬時に到達することが分かった。アルゴン希釈の水蒸気を想定すると、一定の温度・圧力に対して、希釈率の高いほど水からの水素生成率は高くなる。 膨張条件としては、800K以下への膨張を行うことが必要であることが反応シミュレーションから明らかになった。900K以上に留まるとその温度での平衡組成となり、1500K以下だと事実上全てが水に戻る。膨張速度として急速膨張速度は通常より一桁以上速い0.1ミリ秒としても水素固定には十分ではなく、大半の水素は水に戻る。水素回収のためには、機械的な膨張ではなく、超音速自由膨張のような流体力学的高速防諜手段を用いるか、超高温のまま生成酸素を取り除く手段が必要であると考えられる。
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