今年度は金属酸化薄膜の熱熱物性計測ならびに解析モデルの改良を行った.対象とした薄膜はCe0.1Gd0.1O2薄膜であり,レーザーアブレーション(PLD)法にて生成した.PLDチャンバーには酸素を1.3Pa導入して,ターゲット試料(Ce0.1Gd0.1O2)に対して,KrFエキシマーレーザー(波長248nm,繰り返し10Hz,フルエンス3.3J/cm2)を照射し,石英基板上(室温)金属酸化薄膜を成膜した.成膜した薄膜の厚みを触診式プロファイラーで計測した結果,およそ390nmとなった.この薄膜に対してMo薄膜を成膜し,熱伝導を計測したところ80W/(m.K)となり予測より大きな値となった.薄膜の熱伝導率はその構造によって値が大きく変化することから,既報の薄膜に対して構造が異なっていることが考えられる.また高温下での計測を念頭にシリコン基板に成膜されたモリブデン薄膜を600℃の窒素雰囲気下で加熱したところ,表面状態の大きな変化は見られなかった. 本研究で用いたサーモリフレクタンス法では,加熱光が照射されてから50ナノ秒後までの試料の温度変化をプローブ光の反射光強度によってモニターしており,これまでは測定対象となる薄膜の熱伝導率の感度が最大となる時間領域でデータを解析していたが,解析モデルを改良することにより測定の全時間領域で実験データと良好に一致する解析モデルを構築した.またガラス基板に成膜された白金薄膜でモデルの検証をしたところ,加熱光およびプローブ光の照射方向に関わらず,熱伝導率が算出でき,かつサーモリフレクタンス信号の挙動をフォノンの干渉により説明できるモデルを構築できた.
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