研究課題/領域番号 |
15K13890
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
田口 良広 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (30433741)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 熱物性 / 熱工学 / バイオデバイス / 計測工学 |
研究実績の概要 |
平成27年度に得られた研究実績の概要を以下に示した。 (1)サンドイッチ構造ナノチャネル型サンプルセルの設計と試作 初年度はプロトタイプを作製し、原理の妥当性を実験的に検証した。ナノチャネルを形成するためには石英基板をドライエッチングにより溝を形成する方法などが開発されているが、光導電膜と透明電極をサンドイッチ構造に形成させる本デバイスでは適用することができない。そこでSU-8フォトレジストを用いたナノチャネルの形成を試みた。市販されているSU-8ではナノチャネルを形成することができないため、溶媒を用いて希釈し低粘度化することでナノ薄膜を形成することを試みた。また、サンドイッチ構造を形成する場合、膜の均一性がボンディング性能に影響する。本研究ではコーティングプロトコルを確立し、SU-8によるナノチャネルの成膜を目指した。平成27年度はナノサイズのポリスチレンビーズを用いて縞状濃度分布を形成し、励起後の拡散現象を観察することで拡散係数の測定を行い、成膜したSU-8チャネルが拡散係数測定に適用できることを明らかにした。 (2)光導電膜の簡易成膜法の開発 試料の誘電率によって試料にかかる光誘起誘電泳動力が変化するため、光MEMS拡散センサに特化した光導電膜を成膜する必要がある。本研究課題では、安全かつ簡易に光導電膜を成膜でき、光導電膜の性質を任意に制御することができる光導電膜成膜技術を新たに提案した。本方法により、基板材質に囚われない新しい成膜技術を創出することができ、強力な微細加工技術を提供することができる。平成27年度は、種々の条件により成膜した光導電膜に対して、4端子法による高精度な導電率測定を行うことで膜質を評価し、成膜プロトコルを確立した。また、キャリア濃度制御とオンチップ成膜によるドーパントの注入を行い、従来のPE-CVD法で成膜した光導電膜と同等の明暗導電率比を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、当初の計画通りの研究成果を挙げることができており、おおむね順調に進展している。一方、次年度に予定している濃縮技術に関しても、簡易的な検証実験を行い、妥当性をCCDカメラを通して観察・確認しており、当初以上の成果が出ている個所もある。また、サンプルセルの改良を行い、試料の封入や調製プロトコルを確立し、再現性が向上している。引き続き精力的に研究を推進し、当初以上の成果が出るよう努力する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、実際のナノバイオ試料を用いた実験を通し、提案する超高感度光MEMS拡散センサを実現する。ナノバイオ試料を用いた場合に想定される課題と解決方法を下記に示した。下記に示す推進方策により解析および実験の両方から課題解決に向けて加速度的に研究を推進する。 (1)ナノバイオ試料の吸着:試料セルへのバイオ試料の吸着を抑制するコーティングを新たに提案する。 (2)溶媒の導電率の影響:試料を充分に駆動するためのセル条件を明らかにし、バイオ試料中の拡散係数センシングを実現する。
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