最終年度は、実際のナノバイオ試料を用いた実験を通し、提案する超高感度光MEMS拡散センサの実証実験を行った。ナノバイオ試料を測定する際には(1)ナノバイオ試料の吸着(2)溶媒の導電率の影響(3)微量試料センシングの際の測定感度を考慮しなければならない。そこで下記に挙げる研究開発を行った。 1.自己組織化単分子膜コーティングによる吸着低減:センサチャネル表面に自己組織化単分子膜をコーティングし、ナノバイオ試料の吸着を飛躍的に低減する方法を開発した。ポリエチレングリコールを均一にコーティングするプロトコルを確立し、XPS分光による妥当性検証を行った。本手法により、ナノバイオ試料の吸着による感度低下や不確かさへの影響を低減することに成功した。 2.温度制御型反応性スパッタリング法の開発:溶媒の導電率を考慮した新しい光導電膜の成膜技術を開発した。成膜した光導電膜にコプラナー型電極を作製し、光導電率測定を行い、種々の成膜条件によって光導電率の変化を確認した。このことから温度制御による光導電効果の制御が可能となり、試料の適用範囲を拡大することに成功した。 3.干渉縞変調による高感度検出技術の開発:極微量サンプルを濃縮し測定感度を飛躍的に向上させる新たな光照射技術を開発した。また、本手法に適用可能な光MEMSデバイスを開発した。光MEMSデバイスの駆動角度ならびに応答性が目標値に達していることを実験的に明らかにし、POCT分野への適用が可能なセンシングデバイスの構築を実現した。 4.ナノバイオ試料を用いた検証実験:タンパク質が修飾されたナノビーズを用いて本提案の妥当性を実験的に確認した。表面のタンパク質の種類によるタンパク質相互作用の変化を高感度に検出することに成功した。
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