研究課題/領域番号 |
15K13891
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
斉藤 寛泰 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (80362284)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レーザ誘起ブレークダウン / アブレーション / PM / すす / 熱分解酸化 / 排ガス処理 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,円筒形状に成形した固体炭素試料表面上にレーザ誘起ブレークダウンプラズマ(LIBP)を形成した際に, (1)試料表面性状の変化,(2)発生するガスの成分,(3)レーザ照射回数,レーザエネルギ,および,雰囲気酸素濃度が固体試料の質量変化に及ぼす影響,の3点に着目し検討を行った.固体炭素試料を密閉容器内のホルダーに固定し,YAGレーザからのパルスレーザ光を試料表面付近に集光させ,LIBPを発生させた.集光光学系を調整することにより固体試料に対する焦点位置を任意に変えられるようになっている.本年度はCO,CO2濃度を直接計測することが困難であったため,熱分解酸化の程度を密閉容器内雰囲気ガスの酸素濃度変化から推測した. レーザ照射前後の試料表面を電子顕微鏡で観察し比較したところ,アブレーションの発生により表面がはぎ取られたような状態になっていることが確認できた.また,レーザ照射回数の増加に対して,アブレーションによる固体試料質量の減少量と雰囲気空気中酸素濃度の減少量はそれぞれ概ね比例関係であるが,レーザエネルギを増加させた場合は,100 mJ/pulse程度になるとそれぞれの減少量が頭打ちの傾向を示すことが分かった. 次に,試料表面に対するLIBPの形成位置を変化させた際の影響を調べたところ,レーザ焦点の初期位置が固体試料表面から±5 mm程度ずれても質量減少量にはほとんど差がないことが明らかとなった.レーザエネルギ密度は焦点位置で最大となるが,それよりも低いエネルギ密度の領域でも熱分解酸化が発生していたことになる.さらに,初期雰囲気酸素濃度が熱分解酸化に及ぼす影響を調べたところ,9 Vol%程度の時に効果が最大となるという結果を得た.これらの結果は,燃焼排気を対象とした流れ系の微細炭素粒子処理に対して有利な条件となると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度における当初計画は,実験装置の整備と固体炭素粒子性状に及ぼすレーザ誘起ブレークダウンプラズマ暴露の影響を調べることであった.当該年度予算によるパルスレーザ装置と密閉定容試験装置の導入を速やかに完遂することができ,固体炭素試料に及ぼすプラズマ暴露の影響を検証する実験を早期から開始することが可能であった.当初,すす粒子の模擬試料としてカーボンブラックを用いたが,ブレークダウンによって発生する衝撃波の影響で粉末が飛散し,本装置では正確な炭素質量減少量測定が困難であったため,ペレット状の固体炭素試料を用いることとした. 試験条件において未完の部分もあるが,炭素試料表面付近で発生するアブレーションにより発生した気体状炭素が周囲酸素と反応し,COやCO2に変化していることは確認できており,熱分解後に酸化していると考えられる.レーザ照射条件と熱分解量との関連性についても検討を行い,実験データを得た.ただし,簡易ガス分析計でのガス成分分析であったため,窒素酸化物など他の成分については不明である. 当初の計画において特に重要である検討課題については知見を得ることができており,おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度で実施した検討により,アブレーションによって固体炭素の熱分解酸化が発生していることは確認できた.そこで,計画の最終年度である平成28年度では,当初の研究計画に加えて,微細炭素粒子を含む配管流れ場での検証も行うことを予定している.具体的には,次の二点である. (1)定容容器内にベンゼンやPAH蒸気を充填し,レーザ誘起ブレークダウンによる熱分解処理を試みる. (2)すす粒子の粒径分布をコントロールした配管流れにレーザ誘起ブレークダウン処理を行い,レーザ処理の有無で粒径分布やガス組成がどのような影響を受けるかを調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は,パルスレーザ装置の導入ができなければ遂行できないものである.交付決定された平成27年度予算は申請時の予算額から大幅に減額されており,単年度の配分予算のみでは,レーザ装置の導入はきわめて困難であり,やむなく次年度の予算を前倒し請求し,レーザ装置と必要物品を購入した.次年度使用額は,必要物品購入後の差額分として若干の余剰が発生したものである.
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次年度使用額の使用計画 |
前倒し支払請求により,平成28年度請求額は0円となっている.しかしながら,前年度予算で試験装置は整備されており,計画の遂行にはほぼ問題はない.
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