研究課題/領域番号 |
15K13893
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高橋 雅人 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 上級研究員 (60392015)
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研究分担者 |
岡村 哲至 東京工業大学, 工学院, 教授 (10194391)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高温超伝導磁石 / 熱電素子 |
研究実績の概要 |
本研究では熱電素子として広く用いられているビスマステルルを中心にその極低温での特性を調べた。その結果、極低温において温度が低下するとともにP型、N型ともにゼーベック係数が低下した。さまざまな条件で試験を行った結果、ビスマステルルを用いて擬似永久電流モードを行うことは可能であるが、必要な電流を得るために印加するヒーターの熱入力が小型冷凍機1台の冷凍能力を上回ることが明らかになった。 昨年度開発した液体窒素温度でも作動する電流計を用いて熱電素子を評価した。熱電素子両端を高温超伝導線材(REBCO)で短絡しそこに電流計を取り付けた。これにより、通電状態での熱電素子の評価が簡便にできるようになった。この結果、熱電素子によって安定した電流供給が可能であることを確認した。超伝導磁石に用いる場合、コイルのインダクタンスにより電流変動が抑制されるためより電流安定度がより向上する。特に超伝導磁石はインダクタンスが大きいため有利である。また、超伝導線1本当たりの断面積を小さくして、その代りに巻き数を増やせば高インダクタンスの磁石が製作可能であるため、熱電素子に最適化された高温超伝導磁石の仕様の検討も今後行う必要がある。 熱電素子は、ゼーベック効果により両端の温度差に比例した電圧を発生することができるが、内部抵抗が存在するため熱電素子を流れる電流が増えるとゼーベック効果によって発生した電圧を徐々に打ち消してしまう。内部抵抗を小さくするには、熱電素子を並列に接続することが有効であるが、その分温度差を作るために必要な熱入力が増えてしまう。したがって、極低温でより高性能な性能を持つ熱電素子を探索する必要がある。現実的な超伝導磁石装置として成立させるためには、小型冷凍機1台で冷却できる熱入力程度で擬似永久電流モードが実現できることが今後重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
熱電素子により擬似永久電流モードが可能であることがわかったが、極低温ではこれまで広く用いられてきた熱電素子であるビスマステルルの性能が低下し小型冷凍機1台で擬似永久電流モードを維持できないため、現実的な超伝導磁石装置として成立させるためには、極低温でより高性能な熱電素子が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
40 K程度で高性能な熱電素子の探索は、ほとんど行われていないため困難が予想されるが、適切な材料の探索を行いたい。熱電素子によって擬似永久電流モードの実現は可能であることがわかったものの必要な熱入力を小さくしなければコスト面で外部電源を用意し電流リードから電流を供給する従来手法と同じレベルになってしまう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定になかった極低温で高性能な熱電素子の探索を行う必要があった ので、当初予定していた熱電特性を持つ半導体を翌年度に購入する事にしたため
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次年度使用額の使用計画 |
極低温で高いゼーベック係数を持つ半導体の試作依頼など
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