外部電源と電流リードを用いずに、効率よく高温超伝導磁石を励磁する手法の研究を行った。熱電素子などの半導体を極低温側に持ち込む方式は、外部電源に比べて非常にコンパクトで単純な構造で励磁が可能である。超伝導磁石の励磁の場合、大電流を発生させる能力が必要である一方で、必要とされる電圧は小さくて良い。必要とされる電圧の大きさは、超伝導磁石の場合、電気抵抗がないため磁石の励磁速度に依存する。特に、本方式のように極低温側に設置する場合電流リードの抵抗分も発生しない。また、小型の超伝導磁石の場合には、冷凍機で冷却しながらの励磁も可能であり、その場合励磁速度を節約できる。この用途に見合った素子として、入手性の高いビスマステルルを用いて実験を行ってきた。ビスマステルルの場合、大電流の発生は可能であるが、室温より上の温度での作動に最適化された素子であるため、必要な出力を得るためには、入力パワーが大きくなる傾向にあった。これまで素子の配置や構造を最適化してきたが、新たに別の素子についても検討を行った。こちらの素子は現状では大電流向けではないものの、変換効率が高くまた低温のほうが特性が向上するため、この用途では有望であることがわかった。従来方式である電流リードを用いたときの熱侵入量と同等レベルの入力エネルギーで磁場を維持できることが理想である。特に小型冷凍機の冷凍能力より小さい入力パワーであれば装置として成立する。今後この素子を用いて100 Aクラスの大電流を発生させる方法について検討を行いたい。
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