研究課題/領域番号 |
15K13894
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
小沢田 正 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (10143083)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 3次元動的力学刺激 / ゲル包埋培養法 / iPS細胞 / 分化誘導 / 神経細胞 / ニューロンネットワーク / 3次元培養 |
研究実績の概要 |
本研究では,iPS細胞を用いた再生治療に貢献するため,生きている培養細胞に対し,誘導因子に加え,3次元の動的力学刺激を自在に付加し得る圧電駆動超小型3次元振動ステージを開発し,ゲル包埋培養法と合わせ,これまでとは全く異なる力学的原理に基づく3次元ニューロンネットワークの創生・誘導制御を可能とする革新的システムの実現をめざし,以下のように研究を実施した。 本研究室で開発した圧電駆動超小型3次元振動ステージに対し,付加加速度および周波数帯域を大幅に拡張して利用できるよう最適化・改良を行った。新たに,1枚のステンレス板から立体π/2ねじれカンチレバー状に加工した振動子に,直交2軸方向それぞれの変位が制御できるように2箇所に複数の圧電素子を接着し製作する手法を考案した。培養ディシュを面内回転させることで実質3軸方向に刺激可能とした。 また,コラーゲン・ゲルの濃度の最適化を図ることにより「ゆるやかかつ構造安定的な足場」による神経細胞の包埋培養法の確立を目指した。この包埋培養ディッシュを超小型3次元振動ステージ上に設置し3次元的力学刺激を組織的に作用させることにより,ニューロンネットワークの3次元化を段階的に誘導する手法を開発した。 これら開発したシステムを用い,iPS細胞から神経細胞への分化誘導効率,分化所要時間,分化細胞の健全性について検証を行うと同時に,ニューロンのネットワーク形成に関する基本的な挙動の把握,計測を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超小型圧電3次元振動ステージスシステムの構築と最適化を行った。この超小型3次元振動ステージは,圧電素子を利用した微小一体型振動子とこれに付随する培養用ステージから成るシンプルな構造を有している。この年度新たに,1枚のステンレス板から立体π/2ねじれカンチレバー状に加工した振動子に,直交2軸方向それぞれの変位が制御できるように2箇所に複数の圧電素子を接着し製作する手法を考案した。培養ディシュを面内回転させることで実質3軸方向に刺激可能とした。これらの改善により,これまでより大変位化,広帯域化の可能性を見出した。これらのデバイスをCO2インキュベータ内に組込み制御することにより,種々の3次元動的力学刺激環境下で組織的に培養コントロールを行うことができるシステムの構築を行った。 コラーゲン・ゲルを用いた「ゆるやかな足場」による神経細胞包埋培養法の確立に近づいた。ただし,蛍光観察の鮮明性には依然として難点が存在するため,改善が必要である。この包埋培養ディッシュを上記の超小型3次元振動ステージ上に設置し3次元的力学刺激を組織的に作用させることにより,ニューロンネットワークの3次元化を段階的に誘導する手法を引き続き開発した。 以上のシステムにより,マウス神経細胞については,動的振動刺激を付加した場合,ニューロンネットワークを広く伸展させる効果があることを確認した。ヒト神経細胞については,長時間振動刺激あるいはインターバル振動刺激を付加することで,運動神経細胞への分化・成長が促進されることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
3次元振動ステージスシステムを用いた力学刺激付加デバイスの性能向上をある程度図ることができたため,今後はこれを利用し,比較的培養が容易なマウスiPS細胞(APS0001)を用いた先導研究を行いつつ,そのノウハウの蓄積に基づきヒトiPS細胞(HPS0002)の神経細胞への力学刺激によるニューロンのネットワーク構築・制御法開発を目指す。さらに,コラーゲン・ゲル包埋培養時の染色観察の精度向上および力学刺激付加デバイスのさらなる性能向上も目指す。 特に今年度の具体的な実験研究では,iPS細胞から分化誘導された神経細胞の種々の力学刺激に対する反応や挙動を精査,検証し,3次元ニューロンのネットワーク構築・制御に最適な動的力学刺激環境の探索・確定を目指すものとする。
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