本研究の目的は、強力超音波応用において従来の正弦波形だけでなく、高調波を重ね合わせることによって、台形波やのこぎり波とすることにより、非線形現象を有効的に用いることを提案し、その実現を目指すものである。このためには、振動子の共振周波数が正確に整数比倍となっていることが必須条件であるが、これは必ずしも容易ではない。そこで、強力超音波振動子の圧電駆動部とは別に、共振周波数制御用の圧電素子を設置し、この電気的接続条件、すなわち短絡と開放条件を適切に行うことにより共振周波数を制御することを試みた。 具体的には、ランジュバン振動子の駆動用圧電素子とは別に設けた共振周波数制御用の圧電素子をMOSFETにより短絡・開放状態をデューティー比を制御しながら縦振動の共振周波数を制御した。このときのスイッチング周波数は、駆動周波数と同じ周波数とした。このようにして共振周波数制御を行う際、短絡させるタイミングとしては、圧電素子部分の電荷がゼロとなっているときに同期させないと、圧電現象によって生じた電気エネルギーが損失となって消失してしまうことを見出し、最適なスイッチングのタイミングが存在することを明らかにした。この結果、何も制御しないときの共振周波数26.5kHzを70Hzの範囲でアクティブかつ連続的に制御することに成功した。共振周波数比の変化は、振動子の非線形現象や温度変化に起因するものであり、この程度の共振周波数の制御でも十分な効果であることが予想される。
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