本研究では,ワイヤの長さ変化を制御することで,ワイヤ先端を動的かつ安定に位置決めする手法を確立することを目指している.従来から,横振動の励振,固有振動数変化,張力抜け等が長さ変化するワイヤの取り扱いを難しくしていた.本研究では,ワイヤの長さ(固有振動数)を適切に変化させることで,変位振幅を効率的に増加および減少させる制御方法を数値計算ならびに実験で基礎検討を行った.まず,軸方向の送り制御により二次元平面内における位置決め制御ができるコンセプト内容を論文で発表し,専門分野研究者からの評価を得た.そして,数値計算により軸方向送りの制御により二次元平面内におけるワイヤ先端位置の平面内での制御ができることを確認した.実験による基礎検討から,制御入力装置の制約により,変位量と応答速度,いずれが実現できる装置であるかに応じて制御する方式が変わることを認識した.十分な実験数が得られていないため,定量的な位置決めができるかどうかは確認できていない.これらの結果から本制御方法は,地上でのエレベータロープやクレーンロープの制御に応用できるだけでなく,軽量かつ柔軟なワイヤは宇宙構造物での使用に適しており,1本のワイヤで,広範囲に及ぶ科学観測,資源発見での活躍が期待できるということを改めて認識した.特に,近年,月惑星表面で発見された縦孔等へワイヤを利用して観測機器を降下させる際に,本研究の成果は活用できると考えられる.
|