研究課題/領域番号 |
15K13903
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
多田隈 理一郎 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (50520813)
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研究分担者 |
多田隈 建二郎 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30508833)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ロボットハンド / マニピュレーション / 把持戦略 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては、伸縮・回転が可能な爪機構を、ロボットハンドの指と同じ構造を有する冶具の上に固定して、様々な物体のすくい取り動作の検証実験を行った。爪の伸縮する長さはリニアポテンショメータで計測し、爪の回転運動は回転式のポテンショメータで計測した。 爪機構は、タイミングベルトを介して2個のDCモータで差動歯車を駆動することで、爪の伸縮・回転をコンパクトな機構で行うものであるが、平成27年度は、この差動歯車を構成する傘歯車の回転軸方向に発生するスラスト力により、爪機構全体に振動が発生する現象がまだ残っていたため、差動歯車機構を十分な剛性により保持できる指・爪構造の設計を新たに行って、実際にその構造を構成する金属製部品を製作した。 この指・爪構造全体の剛性を高める改良を施した結果、傘歯車のスラスト力による振動は無くなり、より安定して爪機構の伸縮・回転を行うことができ、両者の動作の分離も確実に行えるようになった。 さらに、摂氏60度以上に加熱すると軟化し、外力を加えると容易に変形し、冷やすと硬度が元に戻るという特質を有し、把持する物体の形状や環境に馴染んで変形することが可能な「形状記憶ゲル」の材質の最適化も進めた。その結果、この形状記憶ゲルを爪先端に取り付けた場合に、室温においても形状記憶ゲルが乾くこと無く、把持する物体の形状や環境に合わせて、その形状を滑らかに変化させることが可能であることを確認した。平成28年度以降は、爪先端の着脱可能な部分に、この形状記憶ゲルを実際に使用して、様々な物体のすくい取り実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
伸縮・回転が可能な可動式の爪機構を実際に作成し、マイコン制御の2個のDCモータにより、滑らかに動作することを確認した上で、様々な動作実験を行った。これにより、次年度以降の研究がスムーズに執り行えることが確実な情勢となったため、順調に研究が進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策としては、本研究グループで研究開発したロボットハンド機構の先端に、この伸縮・回転が可能な可動式の爪機構を取り付けて、「指の関節の自由度のみを有する従来型のロボットハンドの場合」と、「爪の伸縮・回転の自由度をロボットハンドの指先端に付加した場合」とを様々な把持動作によって比較し、爪の伸縮・回転の自由度により、どのようにロボットハンドの把持能力や可操作性が向上するのかを、特に狭隘空間において、定量的に解析・評価するための実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に行った伸縮・回転が可能な可動式の爪機構の把持動作実験・すくい取り動作実験の結果に基づき、2016年度に、ロボットハンドに実際に爪機構を取り付けた上で、追加の実験を行い、その実験結果を反映させた爪機構先端部分の材質の再選定と、設計改良を行う必要が生じ、そのための予算を確保しておかなければならなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究グループが研究開発した、複数の回転関節を有するロボットハンドの先端に伸縮・回転が可能な可動式の爪機構を取り付けるための金属製のアタッチメント部品を設計・製作した上で、ロボットハンドを実際に動かして、出来る限り多くの種類の把持動作実験・すくい取り動作実験を行い、「指の関節の自由度のみを有する従来型のロボットハンドの場合」と、「爪の伸縮・回転の自由度をロボットハンドの指先端に付加した場合」とを定量的に比較する。
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