研究課題/領域番号 |
15K13904
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森本 雄矢 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (60739233)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 骨格筋 / 皮膚 / バイオアクチュエータ / マイクロ工学 |
研究実績の概要 |
本研究では、マイクロ工学技術を応用し、皮膚を保護部・骨格筋線維束の拮抗筋構造を駆動源とする生体模倣アクチュエータの構築を目指している。本年度は曲面形状を有する皮膚組織と骨格筋組織から成るアクチュエータを構築する技術をそれぞれ確立することに成功した。 皮膚組織においては、固定部材を端部に設けることにより、曲面形状を維持しながらの培養を実現した。さらに固定端部を動かすことで皮膚の伸展培養を行うことにより、皮膚組織の形態やタンパク質発現量が変わることも明らかにした。本結果より、固定部材を利用することで様々な形状の皮膚組織を作れることが判明し、目的のアクチュエータを覆う皮膚組織を構築するための基盤技術を構築できたと考えている。 骨格筋アクチュエータとしては、筋芽細胞含有のゲルシートをマイクロモールディング技術にて加工し、加工されたシートをデバイス上に積層させることで、骨格筋アクチュエータを実現した。この時シートの形状を制御することにより、様々な大きさの骨格筋組織をデバイス上に構築することに成功した。作製された骨格筋組織の両端は固定部材により固定されており、固定部材はデバイス上のリンク機構と接合しているため、骨格筋組織の収縮運動によりリンク機構が回転し、骨格筋アクチュエータとして動作できることを確認した。この時、骨格筋組織の収縮力および収縮量はそれぞれ断面積と長さにより基本的に変化するため、様々な大きさの骨格筋組織の組み合わせにより、多様な運動を骨格筋アクチュエータが実現できるようになった。既に、骨格筋組織付きデバイスをコラーゲン膜中に包埋することによる空気中での運動を実現できており、本骨格筋アクチュエータを皮膚細胞付きコラーゲン膜中に包埋することで、空気中で動作可能な骨格筋アクチュエータが構築できると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、曲面形状を有する皮膚組織の構築ならびに骨格筋アクチュエータの構築を本年度に達成することができた。この際、両者の構築に固定部材が必要なことを明らかにし、その形状の最適化にも成功した。さらに、当初予期していない成果として、固定部材を動かすことによる皮膚組織または骨格筋組織の伸展培養により、皮膚組織においては表皮層の厚みおよびタンパク質発現量の増大、骨格筋組織においては糖代謝量の増大を導くことに成功した。 以上のように、当初の計画通りの進捗に加えて予期していない成果を得ることにも成功したため、本研究提案は順調に推移していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画通り、本年度実現した曲面形状を有する皮膚組織と骨格筋アクチュエータの統合に試み、骨格筋の周囲が皮膚組織で保護された生体模倣アクチュエータの創出を実現する。両組織の統合にあたり、培養液中での操作や位置の固定を組織にダメージを与えることなく行う必要があると想定される。本課題に対しては、これまで培ってきたゲルの加工技術を用いて、ゲルを支持体として適切に使用しながら操作・固定を行うことで解決を計る予定である。
|