本研究では、空気中でも駆動可能な骨格筋アクチュエータの構築を目指した。本年度は、皮膚組織の端部を固定した曲面構造を有する血管構造付き皮膚組織の形態・機能の評価を行い、生体に近い形態・機能を有した皮膚組織が構築できていることを明らかにした。さらに、曲面構造を有する細胞組織にて骨格筋周囲を覆うことによって、空気中にて骨格筋アクチュエータが駆動可能になることを示した。 皮膚組織の形態評価として、組織切片の免疫染色を行った結果、表皮の下層のマーカー(サイトケラチン15)、および上層のマーカー(サイトケラチン10)が所定の位置に発現しており、表皮に相当する形態である角化が起きていることが明らかになった。さらに、表皮バリア機能の評価を実施するために、表皮に生理食塩水を滴下したところ、表皮によって弾かれ、撥水性を皮膚組織が有していることを明らかにした。また、バリア機能と相関があるキャパシタンスを測定したところ、真皮に比べて表皮のキャパシタンスが有意に低く、バリア機能が形成されていることが確認された。上記結果から、表皮に相当する機能を有していることが明らかになった。 上記の曲面形状を有する皮膚組織の構築法を応用し、曲面形状を有する保護組織にて覆われた骨格筋アクチュエータの構築に成功した。生死判定試験により、ほとんどの細胞が生きた状態で保護組織にて骨格筋アクチュエータを覆うことが可能であることが明らかになった。さらに,保護組織によって被覆された骨格筋アクチュエータを吊り下げた状態で空気中にて固定し、電気刺激(強さ2.5 V/mm (30 V を12 mm 間隔)、 時間20ms)を与えることで、骨格筋組織の収縮運動にて保護組織ごとアクチュエータが変形することを明らかにした。本結果より、保護組織にて被覆することで、電気刺激を介した骨格筋組織の運動を空気中にて実現できることが示された。
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