本研究課題では、人の触覚受容器の構造を規範とし、接触面との摩擦係数を接触した瞬間に検出できる摩擦係数センサを、MEMS技術を用いて創出することを目的とする。平成29年度は前年度に引き続き、対象との接触時に摩擦方向への力を発生させる局所滑り生成構造の探索、センサ信号のリアルタイム計測処理技術の探索、ロボットおよびラジコンカーを用いた評価実験およびアプリケーションの探索を行った。 局所滑り生成構造の探索に関して、斜状突起を平面に押しつけた際の、変形の異方性を用いる構造を改良した。斜状突起を平面に押下し圧力を加えていくと、加圧に従って反力がせん断方向の力を持つようになり、やがて圧力よりせん断力が勝って横滑りをおこす。MEMS3軸触覚センサ上に樹脂による毛状構造を斜めに埋め込んだセンサ構造について、先端部をなめらかな球状に加工し、被測定面への引っかかりをなくした。このセンサを用いて、測定対象についての、面内で直交する2方向の摩擦係数の算出が可能であることを確認した。 センサ信号のリアルタイム計測処理技術の探索に関し、摩擦係数センサや加速度センサ等の複数のセンサ群に対し、信号を増幅しワイヤレスで伝送するシステムを構築した。評価実験およびアプリケーションの探索として、踏み込んだ時に前足部が微小滑りを起こすことを利用した、ロボット用の摩擦係数検出足機構の改良を行った。アルミ板とアクリル板を用いて実験を行った結果、理論値に近い摩擦係数を導出することができた。また、摩擦係数検出タイヤを用いた実験では、ラジコンカーの前後のタイヤそれぞれ4カ所に摩擦係数検出を組み込み、走行実験を行った。スリップ発生の検出および摩擦係数の算出とともに、定常走行時にも路面状態の把握がある程度可能であることを確認した。
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