研究課題/領域番号 |
15K13910
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
永井 萌土 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00580557)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バイオプリンティング / 単一細胞 / 光硬化 / 可変開口 / 液滴生成 / 多層マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
当該年度は,本研究課題「生体組織アレイを再構築する3次元光造形シングルセルスポッタの開発」を実施するために,3ステップに分けて研究を実施した. 1)細胞整列および単一細胞のモノマー被覆:poly(dimethylsiloxane) (PDMS)製の流路を作製し,ガラスと接合した.PDMSとガラスの流路壁をガラス撥水剤(アクアペル)にて表面修飾した後,液滴形成の実験を行った.分散相をpoly (ethylene glycol) diacrylate (PEG-DA),連続相をフッ素系不活性液体(フロリナートFC-40)とした.ポンプで溶液を輸送し,PEG-DAの液滴生成を行った.流路中にて細胞を含んだPEG-DAの液滴が,連続的に生成した.細胞被覆液滴の形成の基礎原理を確認した. 2)可変開口を持つスポッタ構造作製:PDMS可変膜,SU-8フォトレジストの開口からなるスポッタ構造を作製した.SU-8は最初シリコン基板上でパターンを形成した後,下部にあるリフトオフレジストを溶解して,基板からリリースした.PDMSとSU-8の接合には,PDMSをシランカップリング剤にてアミノ基で修飾し,SU-8のエポキシ基と接合する方法を利用した.構造の作製後,スポッタに空圧を印加し,可変膜の駆動を確認した.基本的なデバイス構造の作製技術を確立した. 3)細胞の光硬化固定:紫外光や青色光(405nm)でラジカル反応が開始する重合開始剤を利用し,細胞を含んだPEG-DAの硬化を行って,細胞生存率を評価した.青色光照射でのPEG-DAのゲル化を確認した.また紫外光用の重合開始剤と比較すると,細胞の生存率低下は同程度であった.光を利用した細胞固定の基本原理を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「生体組織アレイを再構築する3次元光造形シングルセルスポッタの開発」に向けて,3項目に分けて,順調な親展が見られ,基礎的な部分が確立されたため.
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今後の研究の推進方策 |
1)細胞整列および単一細胞のモノマー被覆:安定的にモノマーで被覆した細胞液滴が形成される条件を探索する.これまでは流量が一定の状態でも,液滴生成の条件が移行する場合があった.表面状態や空泡の混入による液滴生成条件の変化が考えられるため,これらによる条件の変化を抑える. 2)可変開口を持つスポッタ構造作製:可変開口形成の歩留まりを上げ,細胞液滴を開口から吐出する.これまで可変膜の破損が見られることから,今後は膜厚や接着条件を変更して,歩留まりを向上させる. 3)細胞の光硬化固定:さらなる光硬化の高速化を目指して,今後はレーザーを光源にした光学系を構築する.レーザースポットをスキャンし,高速の硬化を実現して,複数スポットでの細胞固定を可能にする.これまで水銀灯を光源に利用し細胞を硬化していたが,ワンスポットの硬化に数秒の時間がかかっていた. 4)全機能統合:1)-3)の機能を統合して,細胞の配置・固定を実証する.
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