生体外の3次元生体組織(生体システム)アレイの再構築を目的として,生分解性・光硬化性モノマーで被覆した単一細胞(直径約10μm)を利用し,3次元光造形を行う単一細胞プリンタの開発を進めた.本研究で実績のある細胞操作・加工技術に加え,流体力・圧力・光を駆使し,複数種の単一細胞を3次元的に組み上げる光造形システムを構築を目指した. 1.光硬化性樹脂の液滴生成評価,2.ノズルアレイの作製,3.光硬化性樹脂の光硬化・細胞固定の評価を行った. 【1. 光硬化性樹脂の液滴生成評価】細胞を被覆する液滴を安定して生成するために,流路内部をPDMSとしたデバイスを作製し,液滴生成を評価した.連続相にミネラルオイル,分散相にPEG-DA溶液を利用したとき,細胞の直径に近い液滴径を得た.また液滴生成周波数は分散相流量の増加に比例して高くなる傾向を示した.連続相流量を増加させた際,同様に比例して高くなる傾向を示した. 【2.細胞吐出制御のためのノズルアレイの開発】ノズルアレイ構造の設計及び作製を行い,SU-8とPDMSを接合する構造とすることで,作製プロセスを簡単化した.また,接合強度は200 kPa以上を示した.デバイスの動作において十分である.デバイス断面の観察より,流路寸法は,設計値に近い値を示した.細胞捕獲・吐出動作への応用が期待できる. 【3.レーザーおよび重合開始剤LAPの導入による細胞固定法の検討】光硬化性樹脂について,各濃度における樹脂の硬化に必要な積算光量を推定した.硬化には積算光量が重要なことを理解した.つまり照射時間が短いほど,パターンが短時間で形成できる.また濃度が高いほど,硬化時間は短いことを示した.1.0 w/v%,100 mW/cm2の条件で,最も短時間で硬化した.このとき硬化時間は0.2 sであった.短時間での光硬化を求めるうえで,十分な硬化時間である.
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