研究課題
ヒト幹細胞由来の細胞製品を用いた再生医療技術において、残存する未分化細胞や目的以外の細胞の混在等の問題が存在し、それらの細胞を除去せず移植へ用いると、腫瘍の形成や、目的細胞の機能低下の恐れがある。現在、細胞分離法として、フローサイトメトリーが広く利用されているが、高速流体内で細胞にレーザーを当てることから、細胞への光学的・機械的ダメージが課題である。また、近年マイクロ流体デバイスを用いた細胞処理が多く提案されているが、細胞へのダメージに関しては明らかになっておらず、細胞を研究する研究者からはマイクロデバイスに対する疑問もある。そこで、本研究は、マイクロ流路における細胞へのダメージを世界に先駆けてヒトiPS細胞由来の細胞に対して明らかにし、その知見を元に流体中の細胞挙動を解析する連成解析を用い、ヒトiPS由来細胞の機械的特性は他種類の細胞と異なることを考慮したデバイスの内部構造の最適化を実現し、細胞にダメージを与えない非侵襲的かつ高効率に細胞を選別・精製・回収可能な分離原理を考案する。過去の2年間において、マイクロ流路内構造における細胞へのダメージを明らかにするとともに細胞と流体の連成解析ソフトウエアを用いて、デバイス中の細胞軌跡のシミュレーションを行い、流体デバイスの内部構造をダメージが無く、実際のヒトiPS細胞由来の目的細胞と混在する細胞を回収・分離できるように最適化した。その結果、各種類細胞に適合デバイスの作製条件を見出した。さらに、心筋細胞と混在している未分化細胞や線維芽細胞など、4種類の細胞集団の分離を実現することができた。今後、見出した最適化条件で作製したデバイスの安定性と再現性を確認する予定。
3: やや遅れている
現在、回収された心筋細胞の回収率とダメージ評価、そして同時に除去された細胞のトラップ効率評価を行った。フローサイトメトリーの結果とトラップされた細胞を同定した結果、ダメージ無く、80%目的細胞を回収された。複数種類の細胞を心筋細胞とミックスして、改善した直列式デバイスに流す実験を試したが、デバイスの改良プロセンスを完了した。その引き続き、見出した最適化条件でデバイスの再現性を確認する予定だったが、本研究課題の代表者が所属する組織の再編するため、他の業務が多忙となり計画実施に遅延が生じた。
来年度最適化条件で作製されたデバイスを用いて、安全性と再現性を検討するために実験を行う予定である。具体的に、最適化された直列式デバイスを構築して、4種類細胞集団の分離実験を行う。(1) 目的細胞を回収する。(2)ドラップされた細胞の分離率と目的細胞の回収率及びダメージの解析を行う。(3)実験の回数を繰り返し、デバイスの再現性を確認する。
今年度見出した最適化条件で再現性を検討する予定だったが、本研究課題の代表者が所属する組織の再編するため、他の業務が多忙となり計画実施に遅延が生じた。H29年度に実験を再開するため、補助事業期間の延長をした。
今年度、最適化されたデバイスの安定性と再現性を検討する予定。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)
Journal of Materials Chemistry B.
巻: 5 ページ: 236-244
DOI:10.1039/C6TB02246D
Biofabrication
巻: 8 ページ: 035017-035026
10.1088/1758-5090/8/3/035017