研究課題/領域番号 |
15K13914
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水谷 康弘 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40374152)
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研究分担者 |
高谷 裕浩 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70243178)
岩田 哲郎 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (50304548)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光相関 / エリプソメトリー / 光スピンホール効果 / 蛍光顕微鏡 / 弱測定 |
研究実績の概要 |
平成 27 年度は,光相関イメージング法と偏光計測法に分けて研究に取り組んだ. 光相関イメージング法では,蛍光強度分布を取得するための光相関イメージング装置の基本システムを構築し,さらに,光相関イメージング法の微弱光特性を取得した.光相関イメージング法の光学系は, ランダムな強度分布を照明するための DMD プロジェクター,被撮影物体および点型光検出器であるピンフォトダイオードで構成した.また,蛍光観察を行うために,蛍光フィルタを光学系に導入した蛍光顕微鏡光学系を導入した.ここで用いたプロジェクターは一般的な投影速度である30Hzのプロジェクタを利用した.また,顕微鏡の倍率は,5倍から50倍まで対応可能な光学系としている.プロジェクタから照明された光により発せられた蛍光は,ピンフォトダイオードによる光強度検出を経たのちに,AD変換機によりデジタルデータとして取得した.最終的な蛍光像を得るために必要な相関演算はPC内で計算を行った 一方,偏光計測法としては,量子光学効果を利用した計測を行ってきた.近年,光スピンホール効果という原子一層の検出が可能な原理が提唱されている.本研究では,まずは,光スピンホール効果の基礎実験を行うことで,その計測への有効性を確認した.光学系は,一般的なエリプソメーターの光学系に弱測定光学系を導入するという簡易な光学系である.サンプルとしてガラス基板を用いたところ光スピンホール効果による100nm程度の光線のシフトを確認することができた.この計測方法は点計測であることから,光相関イメージング法を組合わせることを考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初は,一般的な偏光計測をベースとして光相関法を用いることで二次元展開を図る予定であった.しかし,一般的な偏光計測法よりも光スピンホール効果を利用した偏光計測の研究の緊急性が高まったため,急遽計画を変更した.当初は,光スピンホール効果を検出できるかという点に不安があったが,取り組んだところ正確に検出することができた.今後,世界的に類の見ない偏光計測法を確立することができることから,予想以上の成果とも言える.一方で,二次元イメージングするための光相関光学系の作製も行った.また,微弱光特性を明らかにすることで,一般的な撮影法に対して良好な耐ノイズ性能を確認することができた.付加的ではあるが,一分子イメージング等への応用展開も図ることができる.以上のことから,当初の予定とはことなるものの,当初の予定よりも波及効果が大きな研究へと発展しているという自己評価である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,主に二つの点に焦点を絞って研究を進めていく. 一つ目は,当初の計画のとおり,二次元偏光計測システムの構築と測定装置としての最適化である.光スピンホール効果を利用した偏光計測法を新たに確立したので,別途構築しておいた光相関イメージング法を偏光計測光学系に導入する.ここでは,偏光計測法の光源と検出器を偏光するだけなので容易に実現できると考えられる.導入後は,基本的な動作特性や精度検定を行ったのちに高速化への最適化を図る.高速化では,照明する光パータンをアダマール行列に準じたパターンを照明することで照明回数を減らすことを考えている.しかしながら,アダマール行列に基づいたパターンは,空間解像度が限定されるため,市場で必要とされる空間分解能を考慮しながら最適化を図る予定である. 二つ目は,本システムの新たな分野への展開である.ここでは,蛍光顕微鏡への応用と精密距離計測への応用を模索する予定である.蛍光顕微鏡では,一分子イメージングなどの微弱光イメージングが必要とされている.そこで,光相関イメージング法を蛍光観察に適用することでその優位性を利用することができる.また,本システムでは,光スピンホール効果を利用していることから,その効果が発生した時に生じる光のシフト量は100nm以下である.また,そのシフト量は,定量的に明確であることから距離計測に応用できると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画のうち,偏光計測法に関する内容を偏光した.当初は,点型検出器を新たに購入し用いる予定であったが,基本原理確認のため二次元検出器を用いた.この二次元検出器は現有装置を利用したため費用に差が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度では,基本原理が確立したことによる装置の最適化を図る.ここでは,高速化のために,可視光に対応した位置依存型点型検出器(PSD)を新たに導入する予定である.
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