研究課題/領域番号 |
15K13915
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木口 量夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90269548)
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研究分担者 |
荒田 純平 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40377586)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 知能機械 / 人間機械協調 |
研究実績の概要 |
振戦は自らの意思とは無関係に生じる手の震え等の振動現象であり,本研究では,外部のアクチュエータや機械システムを着用することなく,自らの筋力を用いて振戦を抑制することを目的とし,筋-トルクモデルの逆モデルを利用して振戦抑制に必要な筋肉とその活動量を推定し,機能的電気刺激を対象となる筋肉に加えることで振戦を抑制する手法の研究を進めている. まず振戦患者の詳細な3次元振戦運動およびその際の関連筋肉の筋活動の計測・解析を行った後,筋-トルクモデルの逆モデルを用いて振戦抑制に必要な筋肉とその活動量を推定する手法の提案を行った.ここでは,上肢姿勢に応じてリアルタイムで変換行列の各成分の調整を行うファジィ・ニューラルネットワーク(ファジィ・ニューロ調整器)の学習も行っている.本研究での手法は,まず筋電信号や加速度計等を用いて手先の力ベクトルを推定あるいは計測し,バンドパスフィルタを用いて振戦成分を分離し,逆位相の力ベクトルを患者本人の筋活動により発生させることで振戦をキャンセルするものである.ここでは,逆位相の力ベクトルを発生させるために必要な筋肉とその活動量を推定する手法が重要な鍵となる.詳細な振戦運動の計測・解析結果を基に作成した筋―トルクモデルの逆モデルを用いることにより,発生している振戦を抑制するために必要な筋肉とその活動量を推定することが可能となる.また,H27年度では,実際の詳細な振戦運動の計測・解析結果に基づき,sin関数を用いた人工ニューラルネットワークにより効率的に振戦運動を推定し,逆位相の動作を生成することにより抑制できることを確認した. 一方,筋―トルクモデルの逆モデルを基に推定した筋肉での筋活動を生成するため,電気刺激装置を構築し,電気刺激のパラメータ(電気出力,周波数,パルス幅,刺激時間)の検討を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度は,「詳細な振戦運動の計測・解析」,「筋―トルクモデルの逆モデルを用いた振戦抑制筋活動の推定」,および「目標筋活動を生成するための電気刺激の制御」の研究を行ううことを予定していた.その内,「詳細な振戦運動の計測・解析」については,予定通り実際の振戦患者の詳細な振戦運動の計測と解析を行った.また,「筋―トルクモデルの逆モデルを用いた振戦抑制筋活動の推定」についても,予定通り筋―トルクモデルを構築し,人工ニューラルネットワークを用いることにより効率良く振戦運動を推定することを行い,逆モデルを用いることにより振戦が抑制できることを確認した.「目標筋活動を生成するための電気刺激の制御」に関しては,筋―トルクモデルの逆モデルを基に推定した筋肉での筋活動を生成するための電気刺激装置を既に構築しており,ほぼ予定通りパラメータの検討に入っているため,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究のうち,特に目標筋活動を生成するための電気刺激の制御に関する研究を継続しつつ,主に筋―トルクモデルおよび電気刺激パラメータをリアルタイムで調整することにより振戦を更に低減させる研究を行うものとする. また,リアルタイムで筋-トルクモデルおよび機能的電気刺激のパラメータを補正することにより振戦を更に低減させる適応手法を提案する.前年度の研究において,筋―トルクモデルは各被験者に対してファジィ・ニューロ調整器の学習を行うことで対応し,電気刺激の制御は各電気刺激パラメータを調整することで対応するが,モデル誤差等は避けられないため,振戦を完全に抑制することは困難であると思われる.そこで,リアルタイムで筋―トルクモデル誤差を補正すると同時に,制御に用いる電気刺激パラメータも補正する手法を検討するものとする.ここで,筋―トルクモデル誤差の補正に関しては,ファジィ・ニューロ調整器を補正することで対応し,電気刺激パラメータの補正に関しては,各パラメータのオンライン補正手法を提案する.実験装置は前年度で作成したものを用いるものとする.
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