本課題では代表者が発明し特許を申請している「微小空間内渦輪生成技術(特願2014-201439)」のシーズを活用し,気泡噴出部材から噴出した微細な気泡を、親気泡に衝突させるといった新しい方法論を用いて中空のリング状であって且つ回転している気体の輪である渦輪を微小空間場に発生させ安定に輸送することを目標として研究を行いました.この電界誘起で発生した気泡は,静電気を帯びており,界面の静電吸着力によって汚れや反応試薬を吸着することができる大きな利点を有していることがわかりました. そこでハイスループット性能を向上させるために多筒式の気泡噴出部をMEMS技術で構築し,さらに3次元加工技術への展開を行うためにタンパク質結晶の3次元加工技術への展開を行い,その加工性能を評価しました.当初は2次元多筒式の気泡噴出部材を基板の上に構築することについて困難を極めたが,気泡噴出部の筒の内外径の比率や先端の気泡リザーバとなる部分のアスペクト比など気泡噴出に関する重要なパラメータを特定することにより,2次元基板上においても高効率な気泡噴出を達成することに成功しました.また,多筒式にすることによる気泡同士の干渉などの気泡噴出部近辺の流体力学的な問題についても評価することにより気泡噴出部の間隔の最適条件を特定することに成功いたしました.気泡界面の帯電性や付着性については,光ピンセットをもちいた計測を行うことによりpNレベルの付着力計測を行ない電界誘起で発生させた気泡の帯電性と優位性について確認することにも成功しました. この研究は微小空間内の高効率洗浄技術に繋がるだけにとどまらず,温度差を利用した微小空間内の冷却技術や,微小空間内反応場生成による新材料創成,渦輪界面上のせん断流れを利用した低侵襲三次元加工技術などへの実用化へ期待されています.
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