研究課題/領域番号 |
15K13919
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 陽 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (40532271)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / マイクロマシン / 流体工学 / 生体機能利用 / ミミズ |
研究実績の概要 |
掌サイズの基板上の微細流路に化学・生化学プロセスを集積したマイクロ流体チップは次世代型実験ツールとして注目されているが流体や物体の駆動には流路に比べ大きく煩雑なシステムが必要である。一方、生体の筋組織は精緻な化学・力学的機能が集約された流体制御素子であり、これを組み込むことで飛躍的に高集積・高機能なデバイスを実現可能との着想のもと、申請者は以前心筋を用いたポンプを開発したが、外部制御が困難という問題があった。そこで申請者はミミズの体壁筋に着目した。これは心筋や平滑筋のような流体制御に適した膜環状構造を持ちながら骨格筋のように瞬発性・制御性が高く、また体表の剛毛と併せて蠕動運動も可能なきわめて高度な筋組織であり、本研究ではこれを用いた微小流路内での流体制御および物体輸送システムの創成を目的とした。 当該年度は、前年度に測定したミミズ体壁筋の生理力学的な特性をベースとして、実際のデバイスへのアプリケーション開発に取り組んだ。デバイスとしては、効果・現象がわかりやすいマイクロポンプとし、デザインは典型的なダイヤフラム型オンチップポンプのアクチュエータ部分をミミズに変えたものとした。マイクロ流路を含むチップは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)で作製し、逆止弁もPDMS薄膜で形成した。また、ミミズ体壁筋の張力を効果的にダイヤフラムに伝えるため、力変換機構であるプッシュバーは高め(2mm)に設計した。結果、肉眼で十分確認できるレベルの高流量(5 μL/min)が実現でき、ポンプ機能が実証できた。今後の細胞デバイス発展にとって意義深い結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度は、実際にミミズの体壁筋を用いたポンプを実現することができ、まずは当初の計画を達成できたといえる。さらに、それだけにとどまらず、その流量が当初想定していたnL/minオーダーではなく、肉眼で容易にリアルタイムに流れが確認できるレベルのuL/minオーダーまで出ていることも明らかになったことから、研究代表者らが以前に開発した心筋細胞ポンプなどの従来の細胞デバイスの性能を遥に凌駕するデバイスが作製でき、当所の目的以上に進展がみられたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ポンプだけでなく、ミミズ体壁筋の収縮力を利用したバルブやロボットの開発へと移行するが、まずは、ポンプと同様の構造のデバイスで化学刺激による持続的な収縮を利用したバルブ機能の実証に取り組む。また、そのために、化学刺激薬であるアセチルコリンを利用し、持続的に収縮が起きるか、また溶液交換後に元に戻るかの検証を行い、基礎的な力学応答特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、当初想定よりもポンプの流量が大きいことがわかり、これを大きくするための諸検討の必要性が小さくなった。これにより研究自体は当初の計画よりも進展したことになるが、必然的にポンプ性能向上に向けた実験が大幅に短縮することが可能となり、それ相当分として研究費の未使用分が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用分と翌年度請求の合計2,994,600円は、物品費としてミミズ他、試薬や実験器具などの消耗品として700,000円、学会参加や打ち合わせ等のための旅費として300,000円、実験員等の人件費として1,900,000円、学会登録費などその他として94,600円を計画している。
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