平成27年度では、表面感触提示器の基本構成要素となる1次元アクチュエータのセンサレス化に取り組むとともに、回路改善や周波数フィルタ導入による推定の高速化を行った。本研究課題は、“駆動用の低周波信号に高周波信号を重畳することで得られるインダクタンス値より位置の推定を行う”という新原理に基づいている。 具体的には、1個のソレノイドアクチュエータに対し、まず基本性能試験を実施した。直流電圧と高周波電圧を重畳してソレノイドに印可し、測定した電流から直流値と交流値をFFTを用いて分離した。提案している理論式により、交流のインダクタンスを推定計算した。この値は実測値と比較して精度の高い推定値となっていることを確認した。ただし、直流電流値により、磁束の飽和が生じ、インダクタンスは一定ではないので、その補正手手法を提案し実装した。また、直流電流と吸引力の関係の実測データから、直流電流値がわかれば吸引力が高い精度で求まることを確認した。これにより、電流値の検出から、ロータの位置と吸引力が1ミリ秒のサンプル周期で推定できることを確認した。また、周波数特性の測定データによれば、位置推定のカットオフ周波数は約30 Hz、力の推定のカットオフ周波数は、数Hzであることを実験で確認した。 次に、この要素アクチュエータを2つ用いて、位置と力のバイラテラル(マスター・スレイブ)制御システムを構築した。その性能測定結果、表面触覚器の要素としての基本性能を有することを実験的に確認した。
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