研究課題/領域番号 |
15K13928
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
高島 和則 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60303707)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電気集塵 / 再飛散 / 沿面放電 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、圧力損失が非常に少なく、ナノサイズの微粒子を捕集できる手法である電気集塵を用いたディーゼル排気ガス中の微粒子除去に関する技術的ブレークスルーを見出そうとするものである。 電気集塵機ではコロナ放電により発生するイオンとの電荷交換で荷電された微粒子が電界によって集塵電極に捕集される。しかし、ディーゼルPMのような導電性微粒子は捕集された後に捕集電極上で誘導帯電により逆極性に帯電して再び排気ガス中に放出される以上再飛散現象が生じることが問題である。異常再飛散は集塵電極上の粒子堆積量の増加に伴い顕著になり捕集効率の低下を来たす。そこで、異常再飛散を抑制するための新規手法とともに、運転状態の電気集塵装置の集塵電極上で連続的にディーゼルPMを酸化・除去する手法を見出すことが必要である。 そこで本研究では、沿面放電により発生するオゾン等の活性種による、ディーゼル微粒子の集塵電極上での酸化処理を試みた。集塵電極上に沿面放電発生装置を設置することによって微粒子の捕集と同時に酸化を行い、高い捕集効率を維持することを目的とした。実験は、80℃と100℃、150℃の3条件下で行った。最初に、各排気ガス温度において沿面放電発生装置を動作させない場合の最適な電気集塵装置の運転条件を求めた。その結果、80℃と100℃では十分に高い捕集効率を得ることができたが、150℃では捕集効率が低い値に留まった。そのため、80℃と100℃における最適条件の近傍で沿面放電が捕集効率に及ぼす影響を調査した。100℃および80℃では沿面放電によって時間経過に伴う捕集効率の低下を抑制することができる、沿面放電の効果は80℃においてより顕著であることを示した。この結果は集塵電極上の沿面放電が捕集効率に悪影響を及ぼさないことおよび沿面放電によって捕集された微粒子の連続的酸化処理が可能であることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は電気集塵装置の集塵電極上に沿面放電発生装置を設置したデバイスを試作し、沿面放電が電気集塵の捕集効率に与える影響をディーゼル排ガスを用いて実験的に評価した。 沿面放電は両極性のイオンを生成するため、集塵電極上に捕集された微粒子の電荷を中和することによって再飛散を生じる可能性や沿面放電によって生成された正負の電荷が空間中の端極性イオン場に影響を及ぼす可能性があったが、沿面放電の発生の有無は電気集塵の捕集効率に影響を及ぼさない実験結果が得られたため、いずれの可能性も否定された。 また、連続的にディーゼルPMを電気集塵によって捕集する実験を行い、沿面放電の発生の有無が集塵効率の時間変化に対してどのような影響を及ぼすのかを調べた。その結果、集塵電極上で沿面放電を発生させない通常の電気集塵のモードで実験を行った場合は時間経過とともに集塵効率が低下した。一方、沿面放電を併用する、捕集とともに酸化を行うモーとでの実験結果から、排ガス温度100℃と80℃において沿面放電の発生によって時間経過に伴う集塵効率の低下が抑制されることが明らかになった。 これらの実験結果は集塵電極上での沿面放電によって電気集塵の動作に影響を及ぼさずに粒子を酸化的に除去することが可能であることを示唆しており、異常再飛散抑制のために必要な集塵電極上への粒子の堆積量を低減する手法を見出すことができたことから、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究によって集塵電極上に微細な構造を導入することによってディーゼル排ガス微粒子に対する電気集塵装置の捕集効率を向上させることができることを明らかにした。また、今年度の研究によって集塵電極上に沿面放電発生デバイスを設置することによってディーゼル微粒子を捕集すると同時に酸化的に除去することができる可能性を示した。 次年度は沿面放電発生デバイスに微細構造を導入することによって、グラディエント力による微粒子の捕集向上と沿面放電による微粒子の酸化の相乗効果に関して実験的に検討する予定である。
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