数百から数十ナノ秒の時間幅を有していたパルス放電に対して、数ナノ秒へと短パルス化することで得られる反応場「ナノ秒パルス放電」は、これまでにその物理・化学的特性が明らかになり、同時に、その省エネルギー性が評価・実証されてきた。そのため、複数の企業による「ナノ秒パルス放電」の実機化検討が始まっており、その研究過程は基礎フェーズを脱し、既に実用化フェーズへ突入していると言える。このような状況下において、本研究では、「ナノ秒パルス放電」に続いて更なる省エネルギー化をもたらす『ピコ秒パルス放電』を形成するためのピコ秒パルス電源を開発する。 先ずは、数ピコ秒の立上り及び立下りを実現するスイッチ開発が必要不可欠であり、平成28年度は、平成27年度に作製した体積放電と沿面放電を融合させた放電スイッチの特性を把握した。その結果、放電空間へ封入するガスの種類により、体積放電若しくは沿面放電が優先的に発生することが明らかとなったが、沿面放電の抑制を目的に設けた絶縁体表面上の溝の効果が明らかとならず、現状では、沿面放電と体積放電の長所を取り込んだ低インダクタンス放電スイッチの完成には至らなかった。今後、絶縁体表面上の溝形状等を精査していくことにより、沿面放電を効果的の抑制できる条件を見出すことで、より高性能の放電スイッチの開発に拍車がかかるものと考えている。
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